なぜマイクロンなどの半導体メモリ企業は強いのか?

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マイクロンやキオクシアなどの半導体メモリ企業が去年ぐらいから急上昇していても、私は投資する意欲があまり湧きませんでした。なぜならば、こういった半導体メモリ企業はいつも需要が急騰して製品を大量に作って供給が安定すると、今度は価格が値崩れしてしまうというサイクルを繰り返していたからです。

シリコンサイクルや半導体サイクルと呼ばれているよね

株価が上昇しても、すぐに急落をして元に戻っていたよね

なので、半導体メモリの需要が高まっても、また同じことを繰り返すだろうと思っていました。ところが、あまりにも半導体需要が強く、半導体メモリ企業の株価も非常に高くなっているので、なぜそこまで上昇し続けていくのだろうと思っていたら、どうやら今回はシリコンサイクルを乗り越えそうな感じのようです。

半導体メモリ企業は、需要が高まれば製品を増産する為に工場を新設していかなければなりません。その費用も莫大なものになり、資金力がある企業に限られてしまいます。そして、いざ増産して供給が安定してくると、需要が減る(供給が過剰になってくる)事によって、今度は半導体メモリの価格が暴落してしまいます。

過去の需要拡大期にも工場を新設したものの、供給安定後に起こる価格暴落によって、資金力が耐えられなくなって倒産する企業が相次ぎました。その結果、現在では数社の寡占状態となっていて、AIサーバーなどで必要なDRAM(データの一時保存に必要)は、マイクロン、サムスン電子、SKハイニックスの3社だけで市場シャアの 90%以上を占めるようになっています。

その結果、生産できる企業が限られ、更にAI需要の拡大によってデータセンターが急ピッチで建設されていき、そこに必要な半導体メモリであるDRAMの争奪戦になっているのです。そのため、金をいくら積んででも購入したいというバイヤー(Amazonなどのハイパースケーラー)が買い漁っています。需要の急増により供給が極端にタイトになり、そのため半導体メモリの価格が大幅に上昇しています。

そして、これらの半導体メモリ企業(マイクロン、サムスン電子、SKハイニックス)は、DRAMだけでなくNANDも製造しています。これはスマホやパソコンなどでもよく使われているストレージ(保存庫)です。スマホやパソコンのスペック(性能)を表示されている時に、「メモリ12GB・ストレージ256GB」のように記載されていると思います。メモリがDRAM(一時的な記憶、作業場所)、ストレージがNAND(長期的な記憶、保存庫)という感じです。

AIサーバーの需要急増によってデータセンターが相次いで建設されていき、DRAMの価格が大幅に上昇しています。そのため工場のラインをDRAMに振り分けていくと、今度はNANDが不足していったのです。そして、NANDの価格も上昇していく事になり、結果として半導体メモリ企業が製造しているDRAMやNANDは軒並み値上がりしていく事になります。

先日にアップルが Mac・iPad・HomePod・Apple TV・Apple Vision Proなどの幅広い製品の値上げを発表しました。値上げに踏み切ったのは、AI需要の急増に伴うDRAM・ストレージチップの世界的な供給不足による価格高騰をアップルが吸収できずに、顧客に転嫁した形になっています。

アマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタなどのハイパースケーラーがデータセンターの構築のために、半導体メモリを買い漁っている影響がスマホやパソコンを製造しているアップルにまで波及していき、そしてそれがあらゆるメーカーを直撃している状態となっています。

最新の決算を確認しても、その傾向は顕著であり、「クラウドメモリ事業部(AIサーバーなどのハイパースケーラー向け)」、「コアデータセンター事業部(一般の企業向け)」、「モバイルおよびクライアントビジネスユニット(スマホやパソコン向け)」、「自動車および組み込みシステム事業部(自動運転、工場、スマート家電向け)」の全ての事業部の粗利益率が大幅に上昇しています。

クラウドメモリ事業部(AIサーバーなどのハイパースケーラー向け)」
粗利益率 2025年 58% → 2026年 83%
コアデータセンター事業部(一般の企業向け)」
粗利益率 2025年 38% → 2026年 87%
モバイルおよびクライアントビジネスユニット(スマホやパソコン向け)」
粗利益率 2025年 24% → 2026年 87%
自動車および組み込みシステム事業部(自動運転、工場、スマート家電向け)」
粗利益率 2025年 26% → 2026年 79%

AIブームによって、ハイパースケーラー向けに異常なほどに大量な半導体メモリが必要となり、そのため従来のスマホやパソコン向けの半導体メモリも割を食って生産が衰え、供給がタイトとなり、更に価格が上がっていき、全ての製品の価格が大幅に上昇しています。

さて、今までよりも需要の強さが高いという点は違えど、このままでは従来のパターン(需要急増 → 生産増加 → 供給安定 → 価格暴落)と同じ結末を辿るかもしれません。ただ、今回は従来の反省を踏まえて、半導体メモリ企業は改善策を打っています。

それが、SCA契約(戦略的顧客契約)です。マイクロンは、このSCA契約を大口顧客16社と交わしているようです。このSCA契約とはどういった契約内容なのだろうか。

SCA契約は、「大口顧客がマイクロンの DRAMや NANDを将来の数年分(基本は5年)まとめて確保するための長期購入契約」です。簡単にいうと、「超強力な縛りのある、長期のまとめ買い契約」という事になります。

今までの半導体メモリの販売では、「需要が強い時は価格が上がるが、工場を新設して供給を増やし、供給が安定すると、需要が弱くなり価格が下がる」という悪循環でした。なので、激しく価格の上下動があるコモディティビジネスでした。そこで、需要が非常に高く誰もが半導体メモリを我先にと調達したい現状を利用して、SCA契約を大口顧客と締結して、有利な条件を突きつけたのです。

SCA契約の条件
・絶対にキャンセルできない「テイク・オア・ペイ(Take-or-Pay)」
・巨額の「保証金(デポジット)」を前払いで支払う
・価格に「床(フロア:下限)」と「天井(シーリング:上限)」がある

顧客は優先販売権ではなく、約束した数量を必ず買う必要があります。また半導体メモリが不要となった場合でも約束した金額は全額払う必要があります。これにより、半導体メモリ企業は将来の売上を必ず確保できる事になります。

また、巨額の保証金(デポジット)を要求しており、半導体メモリが欲しければ、前払い金を納めるように伝えています。半導体メモリ企業は、この保証金を使って新規の工場を建設する事ができ、安定した経営が可能となっています。

そして、販売価格に下限と上限を付ける事で、半導体メモリの価格が過去のように暴落する事があったとしても、下限を設定している事で一定金額以下になる事は無く、今の高騰した状態の安定した価格で売る事が出来ます。これが一番大事な点で、従来であれば価格に振り回される企業であった半導体メモリ企業が、長期契約で下限を設定した価格を結ばせることで、安定した売り上げを長期的に確保する事が出来ます。

今まではシリコンサイクルによって、数年は景気が良くても、すぐに価格が暴落して利益が取れない業界であった半導体メモリ企業が、現在のAI需要の激しい高まりによって供給不足に陥っている現状を逆手にとって超強気な態度を取れるようになったことで、今までとは違い、価格決定権を持つようになり、有利な長期契約(SCA契約)をハイパースケーラーなどの大口顧客に結ばせることに成功しています。

長期契約を結び、価格の安定を盛り込んだことで、長期的に安定した売り上げを確保する事ができるようになった半導体メモリ企業。これによりシリコンサイクルから脱却して、将来の成長が見込める企業へと脱皮している事が現在の株価の急上昇へと繋がっていくのです。

    

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