FRBが行う金融政策は米国経済に大きな影響を与える事から、政策金利などを行うFOMCは非常に注目されているし、そのあと(FOMC開催後)に行われるパウエル議長の発言や質疑応答も気になるよね。なので、パウエル議長の質疑応答をご紹介するね。
FRBには米国経済のかじ取りを上手く行ってほしいね
非常に重要で大きな仕事なので大変だろうね
(Q) 2025年の予想インフレ率は前回の想定よりも高くなっている。多くの家計は高止まりした物価に苦しめられているがどのように考えているのか?
(A) インフレ率は以前の想定よりも若干根強いと判断した。2~3年前には、多くの方々がインフレ率を押し下げる為には深刻な景気後退と高い失業率が必要だと考えていたが実際にはそうではなかった。インフレ率低下への道のりは多くの方々が予想したよりもはるかに良い感じで進んで行った。インフレ率は前年同月比で 5.6%から 2.8%へと下がった。かなり良い結果だと思っている。
一方で、インフレ率が目標値までなぜ下がっていないのかというと、原因の1つは、住宅関連サービスを計算するうえで発生するテクニカルな問題だ。数値に反映されるタイミングが実際のペースよりも遅い事が過去2年間の統計で判明した。
現在、人々が感じてるのは高インフレではなく「物価の高止まり」である。私達は食費や光熱費、交通費が高騰して人々の生活に圧力を掛けている事を理解している。私達が出来る事はインフレ率を目標値まで引き下げ、実質賃金の伸びがインフレ率のペースを上回る事を可能とし、景気状況を持ち直すようにすることである。
(Q) インフレ上昇のリスクがかなり大きく跳ね上がったが、11月の大統領選挙の結果が関与していると言えますか?
(A) それだけが理由ではない。すでに 9月~ 10月にインフレ率が高い月が続いていた。11月は再び想定通りになっていたが、年末のインフレ予想は妥当性を失いつつある。これがおそらく最大の理由であろう。更に利下げを検討するとしてもインフレの進展を見極めたい。
(Q) 2025年のコアPCEインフレ率の想定が高止まりして、上振れリスクを懸念する中でも利下げを続ける理由は?
(A) 私達は、来年にコアPCEインフレ率が 2.5%に低下すると想定しており、大きな進呈と言える。緩やかなペースではあるが、それでも実質的な進展を目指している。インフレをそのレベルまで引き下げるのは重要な成果になる。今年のインフレ率は 2.8%~ 2.9%になるだろうから、それよりも良い状況だ。完全に目標である 2%には到達しないが、それでも意味のある進展である。
また、労働市場について注目しなければならない。労働市場の想定については安定していると判断しているが、ゆっくりと冷え込んでいる。引き続き注視していく必要がある。
(Q)インフレ率の予測値は地政学的なリスクも織り込んでいるのか?
(A)私達は、地政学的リスクを注視しているが、こうしたリスクは今のところ米国経済に影響していないと考えている。唯一、目立つのは中東やウクライナの情勢に左右される原油価格だ。一方で国際的な供給状態も改善しており、原油価格は下がってきている。米国においては地政学的な混乱の影響を感じていない。もちろん、リスクとしては残っている。
(Q)2025年もインフレ率が高い水準で推移すると予想される中で、利下げが適切と考えた理由は何か? 現時点では、どのようなタイミングで利下げを想定しているのか? また1月の利下げの可能性について教えてほしい。
(A) 今回の利下げは簡単な判断ではなかったが、雇用の最大化と物価安定という2つの目標を達成するためには最善の選択だと判断した。慎重になり過ぎて労働市場の働きを不必要に低下させることと、急ぎ過ぎてインフレの抑制を損なう事のリスクがある。そのバランスを考慮したうえで、今回も利下げに踏み切った。
現在の労働市場はコロナ流行前よりも緩んでおり、徐々に減速が続いている。インフレ率を 2%に引き下げるために、これ以上労働市場を減速させる必要はないと考えている。就職率も低くなってきており、労働者や企業の調査などの指標も 2019年に比べて労働市場はかなり減速していることを示している。
インフレに関しては順調に進んでいると判断している。11月の時点でコアインフレ率は 2.8%となっていてピーク時の 5.6%から大幅に低下した。住宅価格については予想よりも遅いペースであるが、確実に下がっている。
2025年の利下げペースが遅くなる見込みなのは、来年もインフレ率が引き続き高止まりするという想定を反映したものである。インフレに関するリスクと不確実性は高いとみている。それでも利下げを継続する軌道には乗っていると考えている。しかしながら来年の利下げペースについては、今後のデータに基づいて決定される。
(Q) 高い金利が続いていく中で、さらなる労働市場の減速をどう避けられるのか?
(A) インフレ率 2%を達成するために、これ以上の雇用減速は必要ないだけで、減速したらすぐに問題となるわけではない。しばらくの間、私達は主にインフレ率だけに注目していた。現在は、インフレ率と雇用の2つのリスク要素はほぼ均衡していると考えている。
(Q) 失業率に反映されている以上に、労働市場は減速している可能性はあるのか?
(A) それはないと思う。全体として、労働参加率はまだ非常に高い。労働市場では採用ペースが鈍化した。仕事がある人は安泰でレイオフ(一時解雇)も非常に少ない。多くの失業者が出ているわけではない。しかし、採用率は低い。これは労働需要の低下を反映している。全体を見ると、失業率は非常に低くて労働参加率も高い。賃金は健全で、これまで以上に持続可能な水準にある。労働市場は良好であり、この状態を維持したい。
(Q) 今回の政策決定は、足元のインフレデータを考慮したものなのか、それとも 2025年の財政政策がインフレに与える影響を織り込んだものなのか。どちらがどの程度のウエートを占めているのか?
経済の状態は非常に良く、政策も適切だと考えている。今年の経済成長率は 2.5%で、インフレ率も 5.6%から 2.6%に低下している。私達は実に良いスタートを切っている。利下げペースの鈍化にはいくつかの理由がある。今年後半の経済成長は予想を上回り、25年 9月までの見通しでも予想を上回るとされている。
2025年もインフレが引き続き高止まりすることが予想されている。政策金利が中立水準に近づいていることも、慎重なアプローチを取る理由の一つだ。しかし不確実性もまた、要因の一つである。インフレに関する不確実性が高まっている。委員会内での意見は多様でさまざまなアプローチが取られているが、不確実性が高いときはペースを落とすのが常識的な対応だ。
(Q) 声明文の文言を踏まえると、今回の利下げが当面、最後になるのではないか?
声明文に盛り込んだ規模と時期の意図は、経済が予想通りに推移した場合、利下げのペースを緩めるのが適切な段階に来ていることを明確にすることにある。規模は中立的なスタンスに到達するのにどれくらいの利下げ余地があるかを示している。既に 1%の利下げをしたので、この余地はかなり小さくなっている。
時期は経済が予想通りに推移した場合、調整ペースを緩めるのが適切な水準か、それに近いところに来ていることを示唆している。私達は長期的な決定をしているわけではなく、その時々で妥当な政策を進めようとしている。強調したいのは、政策変更が大きいと予想される状況では不確実性が大きくなるのは普通のことだ。どのような変更が行われるか、それがどのような影響を及ぼすのかを見極める必要がある。政策が変更されたときには、より明確な見通しが得られると考えている。
(Q) 2024年の終わり方に満足していますか? また数年前に予測されていたような景気後退は避けられたと考えているのか?
景気後退を回避できたことは明らかだ。今年の成長は堅実だったと思う。景気の最良の指標とみている民間最終消費支出は 3%程度になりそうだ。これは本当に良い数字だ。経済は素晴らしい成長を続けている。私が出席する国際会議では、米経済の好調さが話題になっているほどだ。世界を見渡せば、成長率は鈍化し、インフレとの闘いが続いている。私は経済の現状とパフォーマンスについて非常に良い感触を抱いており、このままの調子で成長をつづけさせたいと考えている。
(Q) 市場はより具体的な中立金利の値を求めているがそれについてはどう思うか?
中立金利を予測するモデルは無数に存在するが、どれも確証はない。私達も、中立金利の正確な数値をはっきりとわかっていないことは良いことだ。「このモデルや予測はあっている」という考えに陥るリスクがないからだ。あらゆる実証データを受け入れる姿勢を取らざるを得ないと考えている。
金融政策は長期的に、そして時間差で効力を発揮するため中立金利を予想することは難しい。一方で、経済の状態は良い。利下げは経済活動と労働市場を支え、政策も適度に引き締め的であるためインフレ退治も進めることができる。
(Q) 次期トランプ政権が始まる 2025年の最も重大な経済的課題についてどのように考えているのですか?
(A) 私達は米経済が良い状態にあると考える。とても楽観的だ。私達の政策は良い立ち位置にある。来年もよい年となると予想している。
(Q) 関税が実施される事による影響を見逃すのはリスクが高くはないか? 関税によるインフレリスクにたいして迅速に対応する必要があると思うか?
(A) 関税がどれだけインフレに影響するかには、それがどの程度持続するかも含めて多くの要因が絡んでいる。実際の政策についてはほとんど何も分かっていないなかで、何か結論を出すにはまだ早すぎる。
どの国から、どの規模で、どのくらいの期間、関税がかかるのか? 報復関税があるのか? それが消費者物価にどう波及するのか? こういったことは何一つ分かっていない。前回のケースが今のモデルとして有効かどうかも分からない。インフレを経験し、それをなんとか乗り越えてきたという違いもある。
中国から他の国への貿易のシフトもかなりあった。これがどう影響するかも分からない。焦らずに慎重に判断しないといけない。他のアナリストたちと同じように、これらの問題について考えている段階で、確定的な答えを出すところまでは至っていない。
こんな感じで、パウエル議長は質疑応答に応えていたようだね。
来年も、今年のようにインフレも落ち着きつつあり、経済の良好で、株価も順調な1年になるように願いたいよね。
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