私達の生活水準を向上させ、利便性を高めたインターネット。その中でも、ネット通販は新たな買い物手段としてスタンダードとなりつつあり、多くの人々に利用されています。このブログを見ている多くの人は、アマゾンや楽天を利用した事があると思います。
ネット通販の市場規模は年々拡大しており、扱う商品も様々なものを取り扱うようになってきています。
本や家電製品などはネット通販が本当に便利だよね
洗剤などの日用品も持ち運ぶと重いからネット通販をよく使うよ
最近は、生鮮食品などにも力を入れており、スーパーなどと提携をして即日に届けるようになってきていますよね。ますます便利になってきているネット通販。
日本や欧米においてはかなり整備されてきているネット通販事業ですが、世界の国々ではまだまだネット通販事業の整備が遅れている国々もあります。そして、そんな国々こそが今後はネット通販事業の急拡大が見込める市場でもあります。
今回は、ネット通販が未成熟な市場において大きなシェアをとって、王者として君臨している南米の雄であるメルカドリブレの決算を見ながらメルカドリブレについてお話していこうと思います。
メルカドリブレの基本情報
メルカドリブレはNASDAQに上場しており、ティッカーは「MELI」です。
メルカドリブレは、南米(ラテンアメリカ)最大の電子商取引プラットホーム企業です。1999年にアルゼンチンで設立されたメルカドリブレは、スペイン語でフリーマーケットという意味を持ち、現在では18か国で事業を展開しており、約3億人のユーザーを持っています。
メルカドリブレのサービスには、オンラインマーケットプレイス、オンライン決済システム、オンライン広告、物流サービスなどがあります。ラテンアメリカの電子商取引市場において圧倒的なシェアを持ち、2020年には約200億ドルの総取引高を記録しました。
南米最大のEC企業であるメルカドリブレは、特にアルゼンチン、ブラジル、メキシコで強い地位を持っており、南米のEC市場のシェアは34%を占めていました。南米2位のB2W Digital(ビーツーダブル・デジタル)が13%、3位のMagazine Luiza(マガジン・ルイザ)が5%となっており、メルカドリブレが独走しています。
EC企業において世界最大のアマゾンは、南米においては2%~4%程度のシェアに留まっており、南米では地元プレイヤーが強みを発揮している状態となっています。
メルカドリブレの2023年度第1四半期決算
メルカドリブレの2023年度第1四半期決算(1Q)を確認してみましょう。
メルカドリブレ2023年度1Q
売上 30億3700万ドル(35.0%増加)
営業利益 3億4000万ドル(144.6%増加)
純利益 2億0100万ドル(209.2%増加)
1株利益 3.97ドル(205.3%増加)
売上も営業利益も純利益も大幅に伸びています。流石、成長市場における未来のアマゾンといった感じですね。業績が大きく伸びた理由としては、配送料の見直し・広告収入の増加・コスト上昇を補うための小幅な値上げなどがあげられていました。特に値上げで対応しているところは企業としての強さがあるなと感じました。
2023年第1四半期においては、ブラジルで新しいマーケティングキャンペーンを行っており、メルカドリブレとメルカドパゴ(メルカドリブレの決済アプリ)の繋がりを強調して認知度アップを図っていたようです。
また、今後の大きな成長が期待出来るメキシコにおいては、初めてクレジットカードの発行を開始したようです。
次に、市場予測と今回の決算結果がどうだったのかを確認してみましょう。
市場予測 | 予測値 | 結果 |
---|---|---|
売上高 | 28億8600万ドル | 上回る |
営業利益 | 2億8200万ドル | 上回る |
純利益 | 1億6000万ドル | 上回る |
1株利益 | 3.16ドル | 上回る |
市場予測と比較してみると、売上は5.2%上回り、営業利益は20.5%上回り、純利益は25.6%上回っており、全てが市場予測を上回っているという素晴らしい結果をあげていました。
市場予測も大きく上回っており、好調な決算内容を受けて、決算発表後の株価も上昇していました。
アクティブユーザーと総取引額
では、メルカドリブレの業績を細かくみていきましょう。
まずは、ユニークアクティブユーザーと総取引額(GMV:Gross merchandise volume)を確認してましょう。
項目 | 実績値 | 前年対比 |
---|---|---|
アクティブユーザー | 1億0100万人 | 24.6%増加 |
総取引額 | 94億3400万ドル | 23.0%増加 |
ユニークアクティブユーザーが24%増加、総取引額(GMV)が23%増加と、ともに高い伸び率を叩き出していますね。ここが順調に増えていけばEC事業は安定して成長していくので、このまま伸ばしていってもらいたいところですね。
国ごとの売上
では、次に国ごとの売上の状況を確認していきましょう。
項目 | ブラジル | アルゼンチン | メキシコ | その他の国 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
売上 | 15億7900万ドル | 7億2100万ドル | 5億9100万ドル | 1億4600万ドル | 30億3700万ドル |
成長率 | 26.1% | 39.1% | 62.3% | 28.0% | 35.0% |
国別の売上でみると創業の地であるアルゼンチンよりもブラジルの方が多くなっています。ブラジル・アルゼンチン・メキシコが売上の主要国であり、特にブラジルが最重要国となっています。どの国も成長率は非常に高くなっており、特にメキシコは高成長によってアルゼンチンを追い越しそうな勢いですね。
その他の国には、チリやコロンビアなどが含まれています。
では、主要3国(ブラジル・アルゼンチン・メキシコ)の売上と総取引額(GMV)の成長率の推移を確認してみましょう。
主要国の売上の成長率
売上の成長率 | 22年1Q | 22年2Q | 22年3Q | 22年4Q | 23年1Q |
---|---|---|---|---|---|
ブラジル | 63% | 53% | 35% | 36% | 26% |
アルゼンチン | 74% | 62% | 72% | 50% | 39% |
メキシコ | 58% | 65% | 60% | 55% | 62% |
主要国のGMVの成長率
GMVの成長率 | 22年1Q | 22年2Q | 22年3Q | 22年4Q | 23年1Q |
---|---|---|---|---|---|
ブラジル | 29% | 28% | 20% | 29% | 29% |
アルゼンチン | 43% | 33% | 35% | 13% | 15% |
メキシコ | 20% | 30% | 22% | 35% | 41% |
年々増加していくという訳ではないですが、どの国もいまだに高い成長率を残していますね。ブラジルやアルゼンチンは流石に成長率が落ちてきていますが、メキシコは高い成長性をキープしており、今後も期待したいですよね。
ただし、カンファレンスコールによると主要国以外では苦戦中のようです。チリは過去四半期ではマイナス成長であったが、今期はプラスに盛り返したみたいです。コロンビアは利益も取れておらず最も困難な市場となっているそうです。しかし、どれもが長期的に見ればより良い結果が得られると信じていると述べていました。
事業ごとの業績
主力事業であるEC事業とフィンティック事業について、成長性を確認していきたいと思います。
EC事業とフィンテック事業の成長率
項目 | 22年1Q | 22年2Q | 22年3Q | 22年4Q | 23年1Q |
---|---|---|---|---|---|
EC事業 | 40% | 23% | 20% | 22% | 31% |
フィンティック | 108% | 113% | 94% | 73% | 40% |
主力のEC事業は安定した成長性を達成しており、フィンティックは高い成長率を叩き出していますね。
EC事業については20%~30%程度の成長率を保ったまま今後も運営していけるのであれば、素晴らしい成長が期待できますよね。
ドル表記と現地通貨表記の比較
さて、今まで見てきた売上等の金額はドルベースでの実績です。
様々な国々で事業を展開しているメルカドリブレの本当の成長性を確認するのであれば、現地通貨での成長性を見ていく必要もあります。そこで、ドルベースでの成長性と現地通貨ベースでの成長性を比較してみましょう。
売上高成長率のドルベースと現地通貨ベースの比較
売上の成長率 | 22年1Q | 22年2Q | 22年3Q | 22年4Q | 23年1Q |
---|---|---|---|---|---|
ブラジル(ドルベース) | 63% | 53% | 35% | 36% | 26% |
ブラジル(現地通貨) | 55% | 42% | 35% | 28% | 26% |
アルゼンチン(ドルベース) | 74% | 62% | 72% | 50% | 39% |
アルゼンチン(現地通貨) | 110% | 104% | 140% | 143% | 151% |
メキシコ(ドルベース) | 58% | 65% | 60% | 55% | 62% |
メキシコ(現地通貨) | 59% | 66% | 62% | 46% | 48% |
こうやってみると、ブラジルやメキシコは多少の違いはあるけれども比較的ドルベースと現地通貨ベースの成長性に大きな違いはないのですが、アルゼンチンはドルベースの成長性と現地通貨ベースの成長性に大きな乖離がありますよね。
アルゼンチンは毎期ごとに100%以上の高い成長性を叩き出しているのですが、通貨が弱いのでドルベースに換算すると大幅に減ってしまいます。これまでに何度もデフォルトしているアルゼンチンの通貨は信頼性が低いので、どうしてもドルに対しては弱くなりますよね。
長期でみても、短期でみても、アルゼンチンペソはドルに対して下がり続けています。
アルゼンチンペソとドルの1年チャート
アルゼンチンペソとドルの長期チャート
これだけ通貨が弱いと、いくら成長してもドルに換算すると増えないですよね。せっかくアルゼンチンの市場が成長しているのに、ドルに換算すると大幅に減ってしまうのは残念ですよね。
今は大幅に成長性しているからいいのですが、今後アルゼンチンの成長性が鈍化していくと、ドルベースで見た時にマイナス成長になってしまう事もあり得るので、このあたりの成長性と為替レートの状況は注意深く見ていく必要があるのではないかなと思っています。
まとめ
成長途上の南米の国々においてEC事業でトップシェアを誇っているメルカドリブレ。南米の国々が成長していく事でメルカドリブレも成長していく事が想定されており、またEC企業で世界トップのアマゾンも南米ではシェアが低く振るわない事から、今後もメルカドリブレの独走は維持されそうな感じです。
ただし、注意点としては南米の政権の不安定さと通貨の不安定さという国力の弱さだと思います。
特に通貨については、アルゼンチンのようにドルに対して弱い通貨であれば、どれだけ売上を上げてもドルベースに換算するとイマイチ増えていないという事もあり得るし、場合によっては現地通貨ベースでは売上が伸びていてもドルベースに換算すると、マイナス成長になってしまうという事も想定されます。
高い成長性はありつつも、不安定なバックボーンを持っている企業という認識を持ちつつ、長期的にみて伸びる可能性に賭けてみるのであれば、メルカドリブレは面白い存在だと思います。
さて、今回の内容は、YouTubeにもアップしています。動画でみると、ブログとは違う魅力などもあると思いますので、ぜひYouTubeの方も見てくださいね。
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