前にトランプ氏が大統領だった時期には、米中は非常に険悪な雰囲気となっており、お互いが関税を掛けあい、報復関税なども発動して、両国の経済だけでなく世界経済にも影響を与えるような事がありました。当然ながら株価にも影響を及ぼし、2018年10月から株価は大きく下げる展開が続いていました。
米中貿易戦争だね
トランプ氏は突然強気な対応をするから怖いよね
トランプ氏からバイデン氏へと米国大統領は変わっていき、そして米中の関係は幾分マシになっていきました。
ただ、重要な製品や商品に関しては、米国は中国に対して規制を掛ける事があります。例えば、中国には最新のGPUを販売しないように規制しています。これにより、エヌビディアの最先端GPUは輸出できなくなっています。なので、エヌビディアは少し性能を落としたGPUを中国バージョンとして中国に輸入しています。
さて、最近になって今度はスマートカーの輸入と、それに関連した部品の輸入制限を検討しているようです。
今回検討されているスマートカーの輸入とそれに関連した部品の輸入規制については、米国に直接輸入される事を規制するだけでなく、最終的にどこで組み立てられたかに関わらず、中国メーカーのEV(電気自動車)と部品に提供され、中国メーカーがメキシコなどの第三国を経由して米国にEVやその部品を輸入する事を防ぐことも盛り込まれるようです。
また、こうした規制は他の米国同盟国にも同様の内容を共有して適用する事も検討しているそうです。
EVなどがこういった規制の対象となるのは、EVなどのコネクテッドカーや自動運転を搭載しているスマートカーなどは膨大なデータを収集しており、それを悪用されたり、不正アクセスなどによってハッキングされる可能性がある事から、米国に持ち込ませないように規制しようとしています。
そして、この規制とともに、現在中国のEVに掛けられている27.5%の高い関税を更に引き上げる事も追加検討しているみたいです。
中国のEVというと、BYDが一番有名ですよね。去年にテスラを抜いてEVの世界販売台数でトップに立ちました。
しかし、そのBYDでさえ、米国市場には参入出来ていません。米国がEVに課している高い関税によって採算が合わないと判断して米国市場には参入していません。
それでも、米国が中国のEVに更に高い関税を検討したり、スマートカーの輸入禁止を打ち出したりするのは、EV販売台数が世界1位になったBYDは、量産台数増加によるコストダウンやスケールメリットを活かした経費削減などによって、現在の関税でも採算が合うようになるかもしれないからです。
そして、米国市場にBYDが参入する事で、その走行データなどが中国側に渡る事を非常に懸念しています。ゆえに、一切米国には参入させないようにしたいという事になります。
さて、米国が中国のEVに規制を掛けると、当然ながら中国も報復処置に入ります。そして、そのあおりを食うのがやはりテスラになってくるのだと思います。
テスラにも自動でデータを収集する事への懸念が浮上しており、中国当局は軍事施設などへの乗り入れを禁止していましたが、最近は政府施設や公共施設などにも乗り入れを禁止する様になってきました。
米国が強固な態度で中国のEVに規制を掛ければ、中国も強固な態度で米国のEVに規制を掛けるようになっていくので、何も悪くないのにテスラには手痛いダメージを受ける事になります。
BYDは米国市場にそもそも参入していないので、規制を強化されてもたいして痛みを感じませんが、テスラは中国市場にガッツリと食い込んでいるので、中国市場での販売に影響が及ぼすとかなり痛い事になります。
テスラの中国における販売比率は、全体の売上の23%を占めており、テスラの中でも世界最大の売上を上げている国(地域)が中国になります。なので、中国から報復の規制を掛けられると非常に困る事になります。
今後、米中の主導権争いは強まっていく事が予想されており、更にもしもトランプ氏が大統領に返り咲くことがあれば、米中の争いは更に激しさを増していく事からテスラには強い逆風となっていきます。
テスラにとっては、今回の米国の中国スマートカー輸入への規制は、企業努力ではどうにもならない事ですが、業績低迷の要因となる可能性がある為、注意深く経過観察が必要なのではないかなと思います。
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