先月の末ぐらいからニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の大幅下落が話題を集めています。決算発表後の1月31日の株価は38%も暴落しており、翌日の2月1日にも11%の大幅下落となり、その後も株価の下落は止まらず、わずか1週間ほどで株価は60%もの大暴落となっています。
ジェットコースター並みの急降下だね
まさに一人リーマンショック状態だね
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープがこれほどまでに大暴落したのは、決算発表の際に四半期配当の70%減配に加え、アナリスト予想の10倍を超える5億5200万ドルの貸倒引当金を計上をしたからです。株主への分配を削って、更に引当金を積み増さないといけないほど、同社が抱えている商業用不動産が損失を抱えている懸念があるという事です。
商業用不動産市場のリスクは、今後の株式市場にとって最悪の状況を生む可能性を秘めた問題なのです。
インフレを退治するためにFRBが政策金利を高く設定しており、それにより不動産ローン金利などは非常に高くなっています。そして、高金利への負担に耐えられなくなった企業や個人による不動産ローンの焦げ付き(返済不可)が増加していき、不動産ローンの不良債権が増えてきます。特に商業用不動産市場ではその傾向が顕著となっています。
日本のあおぞら銀行も、米国の商業用不動産への融資で損失を出す見込みだという事で、業績見通しを下方修正して、240億円の黒字から一転して280億円の赤字になると発表していました。米国のオフィス向け不動産融資で損失に備える追加の引当金を計上して、更に米国の高金利の影響を受けた外国債券の含み損を処理するようです。当然、あおぞら銀行の株価も大きく下落をしていました。
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープやあおぞら銀行が商業用不動産市場で損失を抱える中、他の銀行も商業用不動産で損失があるのではないかという懸念が高まり、米国の地方銀行の株価は大きく下げる展開となっています。
コロナによるリモートワークの普及でオフィス需要が減少しており、それに追い打ちを掛けるように高金利による金利負担の増加が重なり、商業用不動産市場ではデフォルト(債務不履行)が増加する見通しとなっています。
格付け会社のムーディーズは、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープの格付けを引き下げ、ジャンク級(投機的格付け)にすると発表していました。ニューヨーク・コミュニティ・バンコープの格付けは、「Baa3」から「Ba2」に2段階引き下げられて、格付け見通しは引き続き「ネガティブ(弱含み)」に設定し、さらなる格下げもあり得るとしています。
ジャンク級に2段階格下げされた発行体(企業)は「フォーリンエンジェル(堕天使)」と呼ばれ、債券はハイイールド(高利回り)指数に移行します。一部の運用主体による保有が制限されることもあり、債券発行が難しくなる恐れがあるので注意が必要となります。
ニューヨーク・コミュニティ・バンコープは、去年破綻した米国地方銀行のシグネチャー・バンクの全ての預金と一部の金融ポートフォリオの一部を引き継いでおり、これにより規模が拡大したニューヨーク・コミュニティ・バンコープはより厳しい資本ルールの対象となった事から、厳しい状況が続いています。
米国や日本の銀行を襲った商業用不動産市場の問題は欧州にも飛び火しており、ドイツの金融機関であるドイチェ・ファンドブリーフバンクも米国商業用不動産市場での問題を抱えた事から引当金を積み増した事で、同社の社債が急落しています。
また、米国の商業用モーゲージに投資する不動産投資信託(リート)であるKKR不動産ファイナンス・トラストは、不動産融資の焦げ付きに対応する為に配当を42%減らした事で株価が急落しています。
少しずつ米国の商業用不動産市場に関連する損失が拡大してきており、これが更に大きくなっていけば、当然ながら経済にも悪影響を及ぼし、株式市場にも動揺が走っていく事になります。
今のところは、中小銀行や地方銀行における問題となっており、大手の銀行には問題ないとされています。大手銀行のポートフォリオは多種多様にリスク回避するようになっており、商業用不動産におけるシェアは小さいみたいです。
ただ、地方銀行などは商業用不動産融資に力を入れている所も多く、焦げ付きが多発して体力が持たなくなった銀行の倒産が増えていくと、去年の3月のシリコンバレー銀行などの複数の銀行破綻の時のような混乱が起きる状況になるかもしれません。
リーマンショックのような大惨事になる事はないと思いますが、一定レベルの株式市場の急落ぐらいはあるかもしれないので、今後も商業用不動産市場の動向には注意が必要なのではないかなと思っています。
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