3月7日にFRBのパウエル議長が米連邦議会上院の銀行・住宅・都市問題委員会で行った証言では、発言の冒頭から「インフレ圧力が従来の想定を上回っている」とタカ派の発言で始まりましたね。
今後の経済指標次第では「利上げのペースを加速する必要がある」と従来の0.25%ずつの小幅な利上げではなく、0.5%の利上げもありうるというメッセージを市場に発信していました。
先日の発言と違って急にタカ派になったね
インフレをコントロールするのはなかなか難しいみたいですね
ターミナルレート(利上げの上限位置)も上方修正され、市場予測では5.75%まで上がっていくと想定されています。一部では6%台への突き進んでいくという予測もあり、先行きが混沌としてきましたね。
今後の株式市場はどうなっていくのだろうか。
今月の利上げは0.5%が濃厚
パウエル議長がタカ派の発言を行い、利上げのペースの引き上げやターミナルレートの引上げに言及したのも直近の経済指標をみていたら当然の結果ですよね。
多くの指標はインフレ懸念を示唆しており、去年は急速に利上げをしたにも関わらず、インフレが沈静している訳ではない事はインフレ退治が容易ではない事を物語っています。
直近の経済指標のまとめ
コア個人消費支出価格指数は4.3%増加と速報値よりも上昇
コア個人消費支出物価指数は前年対比4.7%、前月対比0.6%増加と市場予測より上昇
個人消費支出は1.8%増加と市場予測の1.3%よりも上昇
新築販売戸数は67万戸となり市場予測を上回る
コア耐久財受注は0.8%上昇と市場予測を上回る
中古住宅販売成約指数は8.1%増加と市場予測の1.0%増加を大幅に上回る
ケース・シラー住宅価格指数は4.6%増加と市場予測を上回る
IMS製造業価格は51.3%と今後のインフレを想定した数値となる
ISM非製造業購買担当者指数は55.1%と市場予測を上回る
これを受けて、パウエル議長を含めたFRBの面々は利上げのスピードを引き上げる事を検討し始めています。市場ではすでに今月の利上げは0.5%になると想定しており、それに伴い株式市場は大きく下落をしています。
パウエル議長の発言までは0.5%の利上げ確率は28%程度だったのに、パウエル議長の発言後は74%にまで急上昇しているのは、それほど株式市場は楽観的に構えていた事になりますね。
利上げのスピードを落として0.25%をあと数回実施してインフレに対応する予定だったのが、今月の23日にあるFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.5%の利上げを実施して高い利上げへと逆戻りをしてまでインフレ退治に全力を尽くす事になりそうです。
FRBにとっては、収まらないインフレに業を煮やしているといったところでしょうか。
ターミナルレートも引上げ
今までは0.25%の利上げを想定していたのが、0.5%の利上げを実施する可能性が濃厚となった事で当然ながらターミナルレート(利上げの最終到達地点)の予測も引き上げられています。
利下げの開始時期も、従来であれば年末にでも実施されるのではないかと予測されていましたが、現在の予測では来年度にならないと利下げは開始されないと想定されています。
興味深いのは、7月や9月の利上げ予測は6%まで引きあがる可能性があるとする想定が増えてきているという事ですね。今後の経済指標次第ですが、夏頃まで利上げが続き、ターミナルレートの更なる引き上げが行われる可能性が従来と比べるとかなり高まってきていますね。
そうなってくると利下げの時期も更に後ろ倒しになっていくでしょうね。
逆イールドも拡大
パウエル議長の発言を受けて債券市場の利回りも上昇しており、2年債や3か月債は5%を超えており、10年債の4%という利回りと比較すると、どちらのケースも1%以上の差が発生しています。逆イールドもますます拡大していますね。
すでに逆イールドはリーマンショックの頃の水準を超えており、かなりの高確率で景気後退が訪れる事を示唆しています。
NY連銀に掲載されているタームスプレット(3か月債と10年債)
景気後退のシグナルと言われている逆イールド。投資家が注目している2年債と10年債。FRBが注目している3か月債と10年債のいずれも逆イールドとなっており、更にその差が拡大している状態においては、今後の景気後退は避けられない可能性が高いと言えることになります。
今後の動きに警戒
基本的には、金利の引き上げが続くと経済活動や企業の業績に逆風が吹くことになり、景気悪化による業績の下方修正を発表する企業が続出する事によって株価が下っていきます。
今のところは労働市場の雇用状況も力強くて景気を維持していますが、ひとたび崩れ出すとボロボロとこぼれ落ちていく企業が出てくることになるでしょう。
S&P500の株価は、10月のダブルボトムから上昇基調を続けていました。しかしながら今後も利上げが続くことから株価が軟調になり10月の底値からのトレンドライン(黄色線)を割るようであれば、下落圧力が強まっていくだろうし、200日平均移動線(緑色線)を割っていくようであれば再び底値を目指していく展開になるかもしれません。
S&P500の直近の安値である3783ポイント(赤線)を割っていくようであれば下落の勢いは増していくと思います。
今週の株価の動きが弱いようであれば短期的にも軟調な展開が続くと思われるし、下落圧力が強まっていくのであれば底値を目指していく展開に進んで行くのかもしれません。
まとめ
FRBは小出しに情報をだしながら徐々に金利を引き上げていきます。ターミナルレートも数か月おきに想定を引き上げ続けており、今回の5.75%というラインが本当に最終の上限であるとは限りません。ターミナルレートが更に引き上げられて6%に届くことも充分にあり得る状態であるといえると思います。
インフレによる金利の引き上げが続いている現状では、ターミナルレートに到達した後に、すぐに金利を引き下げる事も難しいと感じます。景気が後退したとしても金利を引き下げる事によってインフレが再発する恐れがあれば、大きな引き下げは困難であり、FRBは景気悪化とインフレの狭間に立たされてジレンマに陥るかもしれません。
株価の先行きに弱気なスタンスは継続しながら、それでも下がっていくタイミングで欲しいと思っている銘柄を仕込んでいく事を淡々と続けていきたいと思います。
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