先週は、ジャクソンホール会議にてパウエル議長が講演を行っていましたね。講演の予定時間は30分だったみたいですが、実際にパウエル議長が話したのは8分間だったらしいので、余計な発言をせずに意図的に手短に要点だけを発言していた感じですね。
パウエル議長は前からインフレに対処するという事は言っていましたが、経済指標などを考慮しながら適時判断するという事を言っていたので、株式市場は経済指標を先読みしながら景気悪化を織り込み、景気悪化に向かうのであれば景気の下支えのために利上げを止める(利上げ速度を緩める)必要があるとの判断から株価には将来的な好材料となるとの思惑から米国株は上昇していました。
来年には利下げへと転換していくだろうという株式市場の楽観的な雰囲気の中で行われたジャクソンホール会議では、パウエル議長が「歴史は時期尚早な金融緩和を強く戒めている」と発言しながら、インフレに警戒感を保ち続け、やり遂げるまでやり続けなければならないと語り、株式市場の楽観的な風潮に釘を刺した形となりましたね。
それを受けて、株式市場は大きく下げていたのですが、今後はどのような展開になるのでしょうか。
そんな株式市場において、最近話題になっていたのが「米国株(S&P500)は第二次世界大戦以降は半値戻しをした後に下がる事はあっても最安値を更新する事はない」というものです。先日には、S&P500は最安値から半値戻しを達成したのですが、米国株は本当に半値戻しを達成した後に安値を更新する事はないのだろうか。
今回は、これを確認してみたいと思います。
過去の下落時にはどうだったのか
第二次世界大戦以降はS&P500は半値戻しをした後に直前の最安値を更新した事はないらしいのですが、今まで投資をしてきた体感からすると、結構戻した後に再び大きく下落する事はあったような気がします。
もちろん、体感なのでキチンと調べたこともないし、何となく2番底とかもあったような気もするという程度。
それであれば、とりあえず自分が投資してきた期間ぐらい(私が投資を始めたのは2004年からです)は確認してみようかなと思い、チャートと睨めっこしながら、少しずつ株価を拾いながら下落時から半値戻した後に株価がどうなっているのかを確認してみました。
結果だけを先にお伝えすると・・・
半値戻しても安値を更新してるやんw
では、少しずつ過去の下落をみていこうと思います。
2018年の米中貿易摩擦による下落
まずは、2018年
この年は、米国と中国の貿易摩擦による関税制裁をお互いに発動して株式市場にも動揺が走っていました。2018年9月に米国が中国に対して関税制裁第3弾を発動する直前が最高値の時期となります。関税制裁第3弾の発動と共に株価(S&P500)は下落をしていきます。
この頃の高値は、2018年9月20日 最高値 2930.75になります。
下げ止まり位置 | 安値 | 戻した高値 | 半値戻し可否 | その後の状況 |
---|---|---|---|---|
1回目 | 2641.25 (2018年10月29日) | 2813.89 (2018年11月7日) | 達成 | 再度下落 |
2回目 | 2632.56 (2018年11月23日) | 2790.37 (2018年12月3日) | 達成 | 再度下落 |
そして、12月24日が最安値の底値になっており、S&P500は2351.1となっています。
う~ん、やっぱり下がってからある程度戻しても、そのあとに再び下落する事があるとおもうのだけどね。
もう少し前の株価も確認してみましょう。
2015年のチャイナショックによる下落
次は、2015年。
中国経済の失速懸念や中国の通貨である人民元の切り下げなどに影響されたチャイナショックによって、世界的に株価は下落をする事になりました。
この頃の高値は、2015年7月20日 最高値 2128.28になります。
下げ止まり位置 | 安値 | 高値 | 半値戻し可否 | その後の状況 |
---|---|---|---|---|
1回目 | 1867.61 (2015年8月15日) | 2109.79 (2015年11月3日) | 達成 | 再度下落 |
10月8日には半値戻しを超えており、11月3日には2109.79と高値近くまで戻していますが、そこから再び下落をしていき、2番底へと進んで行きます。結果として翌年の2016年2月11日に1829.08まで下がってようやく下落はストップとなりました。
やはりここでも、半値戻しをした後に再度下落をしており、2番底へと進んでいます。半値を戻したのに、しっかりと安値を更新していますね。
次に、近年で一番有名な大暴落だったリーマンショックを見てみましょう。
リーマンショックでの下落
私の投資経験の中でも忘れる事の出来ないリーマンショック。
「株式市場は長期的には右肩上がりだ」と、意気揚々とフルポジションで自ら暴落に突っ込みながら、激しい下落の渦に巻き込まれて、前言を撤回して損切りしていました。そして急回復する株式市場をただただ呆然と眺めていた苦い思い出のリーマンショック。
長く投資を続けている方でも、ここで手痛くやられた人も多かったのではないでしょうか。
2007年10月9日 最高値 1565.15
下げ止まり位置 | 安値 | 高値 | 半値戻し可否 | その後の状況 |
---|---|---|---|---|
1回目 | 1407.22 (2007年11月26日) | 1515.96 (2007年12月6日) | 達成 | 再度下落 |
2回目 | 1276.37 (2008年3月10日) | 1426.63 (2008年5月15日) | 達成 | 再度下落 |
その後も下がり続けて、リーマンショックの破綻・米国最大手保険企業AIGの破綻危機、金融経済安定法の否決などの度に大きな暴落を繰り返し、2008年3月10日には676.53まで下がっており、高値からの下落率は実に58%にもなるという歴史的な大暴落となりました。
特にこのサブプライムローン問題からリーマンショックに至る過程において、何度も急落をした後に急騰をするという事を繰り返しており、下がっては戻して、戻しては下がってを繰り返していました。
半値を戻したからといって意気揚々と突っ込んでいったら、再びドン底に落とされるという事を繰り返しながら、大暴落を迎えるという非常に厳しい状態となっています。
やはり、安易に半値を戻したからといって安易に突っ込んで行けばいいという訳ではなさそうです。
最後に、その当時は私はまだ投資をしていませんでしたが、有名なITバブル崩壊の時も確認してみましょう。
ITバブル崩壊での下落
ITバブル、インターネットバブル、ドットコムバブルとも呼ばれている2000年に起きた株価の暴落。IT関連の企業が相次ぎ誕生しいき、そしてその将来性を過剰に高く評価した事により、バブルを招いていきます。
マイクロソフトやアマゾン、グーグルなどの本物のIT企業もあったが、実力が全然伴わないIT企業も数多くあり、それらも含めて全てが黄金の源と勘違いされ、各社の株価は高騰を続けるが、次第に現実と実力が露呈していく事により、夢から覚めてバブルが弾ける事になります。
2000年3月24日 最高値 1527.46
下げ止まり位置 | 安値 | 高値 | 半値戻し可否 | その後の状況 |
---|---|---|---|---|
1回目 | 1356.56 (2000年4月14日) | 1520.77 (2000年4月25日) | 達成 | 再度下落 |
2回目 | 1329.19 (2000年10月12日) | 1329.78 (2000年10月31日) | 達成 | 再度下落 |
3回目 | 1264.74 (2000年12月20日) | 1373.73 (2001年2月1日) | 未達成 | 再度下落 |
4回目 | 1103.25 (2001年4月4日) | 1312.83 (2001年5月21日) | 未達成 | 再度下落 |
5回目 | 965.80 (2001年9月21日) | 1172.51 (2001年12月5日) | 未達成 | 再度下落 |
最終的な大底は、更に翌年の2002年10月9日の776.76まで下がり続ける事となっています。
ITバブルの崩壊は、下がり続ける期間も長くて、約2年半ぐらいは下がり続けています。その間、一方的に下がっていたわけではなく、何度も下がった状態から半値ぐらいまでは戻しては更にそこから安値を再度更新していく事を繰り返しながら、結局は高値から50%も下がっていく事になりました。
半値戻したら安心していいのか?
米中貿易摩擦やチャイナショック、リーマンショック、ITバブルなど、それなりに下がっている局面では大きく下げた後に半値戻しをしても、更に安値を更新している事がそれなりにあります。
安値から半値まで戻さないとしても、ほぼ半値近い位まで戻す事も多く、安値から45%~50%ぐらいは戻した状態から再度下落して安値を更新するなどしている事から、それなりに上昇したからといって2番底などの安値更新がないという訳ではないですよね。
半値戻しは全戻しではないんだね
ケース・バイ・ケースかな
当たり前の事なのですが、状況に応じて当然ながら結果も変化していきます。
企業の業績が良かったり、景気が良いけれどもそれなりに上がっていたから利益確定が優勢となった場合などで大きく下げてしまった場合などは、一定の売りが収まれば、その後は未来の見通しが良いという事で上昇圧力の方が上回っていきます。
よくあるケースが、決算がとても良かったのに決算発表の翌日は下落する時がありますよね。「噂で買って事実で売る」とか「材料出し尽くし」とか言われるようなやつがこれですよね。ある程度下げるけれども、結局は未来の業績が良いと想定されるのであれば、いずれ買い戻される事になります。なので、半値戻せば後は買い圧力の方が強くなるケースが多くなります。
一方で、企業の業績が悪かったり、経済指標が悪かったけれども、下がり過ぎていたから買い戻された場合などは、勢いが続かずに一時的に反発してもそのうち株価が下りだして再度安値を更新してしまう事があります。「悪材料出し尽くし」とか言われる事もありますね。
状況に応じて、いいように使い分けているだけで「半値戻したからどう動く」とかは、あまりあてにならないと思っています。
さて、今回の米国株市場(S&P500)は半値戻しに該当します。格言通りであれば半値戻しは全戻しとなるのですが、私はまた下がっていくと思っています。
コメント
コメント一覧 (2件)
このようなアメリカ株の状況下では小出しに少しずつ株を買っていくのが私は良いと思っていますし、そう実行しています。
自分が買いたい株が10%株価が下がったら指値で前もって注文して買って、20%下がったら指値で前もって注文していて買って、30%下がったら指値で前もって注文していて買って…。
このような株の買い方を私は現在しています。(例外もありますが…)
いつアメリカ株が下げ止まるのか、私には予測不能ですので…。
パウエル議長は今まで発言していたことを、そのままジャクソンホール会議の講演で発言したと私は思っているので先週の金曜日のアメリカ株の下げに正直私はビックリです。
市場の反応と私の解釈の違いに戸惑ってしまいました。
私は高配当連続増配銘柄を中心にこのまま気長に買い下がっていきます。
あと、アップルやマイクロソフト、テスラなども現在保有しているので、安くなったら買い増しをしていきます。
当面はアメリカのインフレは2%まで下がらないと思っていますので、気長に少しずつ小出しにアメリカ株を買っていきます。
ただ、早くアメリカ株は右肩上がりで株価が上昇して欲しいですね。
いつそうなるかは予測不能ですが、それまでは辛抱強く安くなった株を買っていきます。
下がってきたら少しずつ徐々に買っていけば、今は報われなくても数年後には充分な形で報いてくれると思います。
仰るように、何処まで下げるのか分からないし、いつから上がりだすのかも分からないので、決めておいた買う基準を淡々とこなしていくのがいいですよね。
パウエル議長の発言は、今までの発言と内容的には大きくは変わってはいないとは思いますが、インフレを叩くという事をより強調的に述べていたのが、踏み込んだ発言だという感じに受け取れたのかなと思っています。
インフレは急には下がっていくものではないと思うので、企業の業績が落ちるのが先か、インフレが沈下していくのが先か、の難しい状況なのだと感じます。
出来れば株式市場は右肩上がりで上昇してほしいので、インフレが収まりつつ、景気も持ち直してくれると有難いですよね。