政商の難しさ

トランプ氏とバイデン氏が争った大統領選挙の際に、多額の資金援助をしてトランプ氏を支え、トランプ氏が大統領に当選した要因の１つとも言われたマスク氏の資金援助。大統領選挙に貢献したマスク氏は、その後にトランプ政権の幹部として迎えられることになりました。

従来の大統領よりもトランプ氏は個人的な感情や個人的な関係を政権運営に強く反映する傾向があり、トランプ氏に気に入られて政権入りしたマスク氏は自らの事業を有利に進められると考えられていました。そのため、マスク氏が所有するテスラなどの株価はトランプ氏が大統領に就任してから大きく上昇しています。

ところが、この蜜月関係はあっという間に終止符を打つことになりましたよね。マスク氏の自由奔放な言動が手に負えなくなってきてトランプ氏はマスク氏を切る決断を行い、マスク氏は政権の要職から身を引くことになったのです。

マスク氏の自由奔放な発言は政権の要職から外れても続いており、トランプ政権の肝いり施策である減税施策に対して痛烈に批判している事がトランプ氏の機嫌を損ね、トランプ氏はマスク氏の率いる企業（テスラやスペースX）への政府契約の打ち切りを検討する意向を示唆していました。

これに対してマスク氏は激しく反発しており、性犯罪で起訴され勾留中に死亡したジェフリー・エプスタイン元被告に関する資料の公開をトランプ氏が妨げているのは自身の名前が記されているからだと主張し、トランプ氏の弾劾を呼びかけるなど、両氏の関係は泥沼化しています。

これらの報道があった木曜日の米国株市場において、テスラ株は 14％も急落するなど暴落しており、政商として期待されていたマスク氏が梯子を外され、事業への影響が懸念されていますね。

トランプ氏もマスク氏も、どちらも個性が強く、自己主張も激しいので、同じ目標（大統領選挙に当選する）に向かって進んでいる時は非常に良いのですが、意見が相違するとたちまち関係悪化が急速に進んでしまいますね。

政商として活躍していくには、巧みなバランス感覚と政治的洞察力、タイミングを読む戦略眼など高度な才能が必要となり、いったん政権を敵に回してしまうと厳しい状況になってしまうリスクがあります。

政商とは、「政治（政権）を利用する者」であると同時に、「政治（政権）からも利用される者」となります。必要とされている時は重宝されますが、用済みとなるとポイ捨てされる危険性があるため、政商としてうまく立ち回るのはなかなか難しいものがありますね。

マスク氏の今後の立ち回り次第ではテスラの株価は大きく変動していくので、今後の動向に注目ですね。