利下げをすると株価が上がると言われてます。確かに利下げをするといずれ株価は上がっていくと思います。
利下げをするとすぐに株価が上昇して右肩上がりになると感じている人も多いみたいなのですが、そのように感じる事が多いのは、近年の利下げ時に株価がすぐに反応して上昇する事が多かったからなのかなと思います。
私達の深層心理に「利下げをすればすぐに株価が上がる」と刷り込まれているからではないだろうか。
コロナショックの時の利下げと株価
直近で一番大きな下落をした場面といえばコロナショックですよね。ほとんどの投資家が体験した事のある暴落でもあります。
コロナが流行して、まさかの世界同時感染パンデミックとなり、都市封鎖・国家封鎖が相次いで、まさに「中世のペスト流行かよ」と思うような状況となりましたね。医学や科学技術が発展した現代においても、ウィルスの脅威から完全に逃れる事が出来ないのだなと改めて思いました。
そんな状況において、経済活動は大きく阻害されて、株価も暴落していました。
実際に、この時の状況がどうだったのか確認してみましょう。
日付 | 前回金利 | 今回金利 | 利下げ幅 |
---|---|---|---|
3月4日 | 1.75% | 1.25% | 0.5% |
3月16日 | 1.25% | 0.25% | 1.0% |
2月にはアメリカでもコロナが流行し始め、株価も下がっていきます。2月25日にはサンフランシスコで緊急事態宣言が出されるなど、経済も非常に強く影響を受け始め、株価は大きく下がります。
それを受けてFRB(米国連邦理事会)は3月4日には緊急利下げに踏み切ります。3月17日にはFOMCが開催される予定だったのですが、それを待たずに0.5%の緊急利下げを行うというサプライズでした。
しかし、株価はボロボロになっていく経済に追従する様に急落していきます。そして、3月13日には全米に国家非常事態宣言が発動されています。
FRBは3月16日には再び緊急利下げに踏み切ります。同じ月に2回も利下げを行うのはリーマンショック以来の出来事でした。その際の利下げの幅は1.0%という大幅な利下げを行い、これ以上利下げが出来ないゼロ金利状態にまで一気に引き下げました。緊急利下げを発表した当日は日曜日だったにも関わらず、緊急会議を開いて即日に利下げを発表するという超サプライズでした。
しかも、次の日の17日にはFMOCが開催される予定だったのに、それを待たずに前日に緊急会議を開いてまで一気に大幅金利引き下げをするあたりがダイナミックですよね。アメリカらしい「いざという時の決断力」がある政治的判断力を感じました。日本ではあまりこういうのは見られないかもしれませんね。
このように、わずか1ヵ月の間に2回も緊急の大幅利下げを実施して、0.5%と1.0%の合計1.5%の超大幅利下げを1ヵ月で行い、経済を強く下支えする事になりました。
この利下げのあとは、株価が急回復をしていき、そのまま右肩上がりの急上昇へと発展していくのは皆さんご存知の通りだと思います。
大きく利下げをすれば、株価が回復するというイメージを強く植えこんだ出来事だったと思います。
リーマンショックの緊急利下げ
利下げをすれば株価が回復すると強く印象付けたのはもう1つの出来事は、リーマンショックの時だと思います。これも最近の大きな下落の1つですよね。
ITバブルになると体験した人も少なくなってくるけど、リーマンショックならば体験した人はそれなりにいるみたいですよね。
リーマンショックの頃の一連の暴落は、サブプライムローン問題からリーマンショックへと続く一連の下落を纏めてリーマンショックと呼ばれていますが、実際にリーマンショックが起こったのはリーマンショックの下落の後半です。
このリーマンショック(リーマン・ブラザースの破綻)が起こってから、大幅な利下げを連続で行いました。
09月15日 リーマン・ブラザーズ破綻
10月08日 0.50%の利下げ
10月30日 0.50%の利下げ
12月17日 0.75%の利下げ
大幅な利下げを何度も行い、急速に金利を引き下げて経済の活性化を図りました。実際に株価が底を打ったのは、リーマン・ブラザースの破綻から半年ほど経ってからなのですが、リーマン・ブラザーズが破綻してから大幅な利上げを連続で行い、その結果としてリーマンショックから脱して株価が底打ちした(景気が戻ってきた)ことから、利下げをすれば株価もあがっていくという印象を付けるきっかけともなったのだと思います。
まとめ
大きく利下げをすると、景気を刺激する事から景気が持ち直したり株価が底を打つ事もあると思います。
ただ、コロナショックの時は例外だと思った方がいいと思います。あれだけ早く回復した事は異例だと思います。通常は数か月で戻る事はないと思います。
コロナショックの時は下落したスピードも速く、戻したスピードも速かったという特殊な例だったと思っています。
どうしても直近の大幅下落がコロナショックだったで、その際の株価の底打ちが速かったこともあり、利下げさえすれば株価はすぐに元に戻るというイメージがあるのかもしれませんが、利下げをしたからといってすぐに株価が底を打つという訳ではないと思います。
利下げも利上げもボディーブローです。じわじわと効果が蓄積されて影響を及ぼしてくるので、即効性はないです。
何かあったなら、「利下げをすれば株価も戻るんだ」という特効薬のようなイメージで語られる事があるのですが、そんな魔法の薬はこの世には存在しません。
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