アマゾンの収益拡大の余地と独占禁止法への懸念

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コロナショック前までは、アマゾンがグロース株の代表のような雰囲気を持っており、米国株に投資している方々の中でもアマゾンを保有している人が多くいました。コロナショック後は、一時は大きく上がった株価もその後は下落をしており、コロナショック前の水準を下回っています。

グロース株の代表といえばアマゾンだったのにね

今は、あまり人気がないよね

米国株のグロース株の代表だったアマゾンから、その座を奪還したのはテスラであったり、エヌビディアであったりといった次世代のグロース株達でした。今では、テスラやエヌビディアが米国株では大人気の銘柄となっています。

それでも、私はまだアマゾンの成長性に期待をしているので、アマゾンを保有しています。

今回は、そんなアマゾンの収益拡大の余地と独占禁止法への懸念についてのお話です。

目次

プライムビデオへの広告が導入される

アマゾンの会員制度である「アマゾンプライム」。月々の会費が必要となりますが、一定額の会費を支払えば、配達料金が無料といったサービスだけでなく、音楽や映画なども無料で見れるなど補助的なサービスが多くあり、アマゾンの会員制度への人気が高い要因となっています。

そんなアマゾンプライムでの動画視聴であるプライムビデオでは、従来はスポーツなど一部の生中継イベントでのみ広告を流していたのですが、今後は映画などについても広告を流す方針へと切り換えるようです。

2024年の早い段階で米国のほか英国、ドイツ、カナダで広告の表示を始める予定となっており、2024年の後半にはフランスやオーストラリア、イタリア、スペイン、メキシコの5カ国でも広告の表示を開始するようです。ちなみに、現時点では日本での広告表示は予定していないみたいです。

追加で2ドル99セント(約440円)を支払えば広告がないプランも選択できるようですが、わざわざ追加料金を払ってまで広告不要を選ぶ人は少ないのではないかなと思います。

アマゾンの広告収入は年々増加しており、アマゾンの第3の収益の柱として存在感を高めています。

オンライン広告のドンはグーグルなのですが、そのグーグルは広告業界におけるアマゾンなどの新興勢力の台頭に危機感を強めており、グーグルの幹部も「アマゾンにシェアを奪われつつある」と発言しています。特に小売り分野の広告ではアマゾンの勢いは強く、グーグルの2倍の成長性を誇っています。

アマゾンプライムでの広告収入は、主に動画制作などの費用に充てられる予定なのですが、動画広告を全面的に導入するようであれば、かなり大きな規模の収入となる事から収益性の向上が期待されています。

年末商戦へ強気の姿勢

アマゾンを含めた小売企業にとって、年末は書き入れ時となります。多量の商品が販売されて、その注文・配送をさばくために、多くのアルバイト等の労働者を雇います。

今年の年末商戦(ホリデーシーズン)に向けた採用では、25万人を雇用すると発表しており、平均時給は20.5ドル(約3000円)に引き上げるようです。また、新規に採用する人には1000ドル~3000ドル(約15万円~約40万円)の臨時ボーナスも支給する予定となっています。

アマゾンは米国では米小売り最大手ウォルマートに次ぐ2番目の規模を誇る大きな雇用主であることから、アマゾンが賃金をあげていく事は、全米の労働者の賃金上昇への強い影響力を与えます。

去年の年末商戦の時期に採用した人員は、15万人だったことを考えると、その1.6倍もの人員を採用する事になります。それだけ今年の年末商戦には期待が出来ると判断している事なのでしょう。

アマゾンは、8月に発表した決算の際にも次期ガイダンスを強気に想定しており、市場予想を大幅に上回る想定を立てて、前年対比で2倍~3倍の利益が出ると想定していました。

今年の年末商戦に対して、アマゾンは強気の姿勢を維持しており、収益性の向上が見込まれるようです。

反トラスト法への懸念

そんな業績向上が見込まれているアマゾンですが、大きな懸念も存在します。それが反トラスト法(独占禁止法)への懸念です。

米連邦取引委員会(FTC)は、今週中にもアマゾンを反トラスト法違反の疑いで提訴する予定です。

米連邦取引委員会の委員長であるカーン氏は、法科大学院時代に「デジタル時代においてはアマゾンに反トラスト法を適用できる」という論文を発表しており、一躍注目を集めた人物であり、反アマゾンの急先鋒です。そんなカーン氏率いる米連邦取引委員会が、いよいよアマゾンを提訴するようです。

アマゾンの料金設定やアマゾンプライム会員制度の内容、アマゾンがサードパーティー(出店者)に対して同社の物流サービスを利用しないサードパーティーに手数料を課している点などが反トラスト法での焦点となっています。アマゾンのプライム会員制度は、顧客の囲い込みに寄与しており、他者との大きな差別化要因となっています。

反トラスト法(独占禁止法)の適用を検討されているアマゾンですが、ではアマゾンのシェアはどのくらいあるのかをみてみましょう。

米国小売企業の市場シェア

小売企業企業名シェア
1位ウォルマート16.8%
2位アマゾン9.5%
3位コストコ6.6%
4位クローガー5.9%
5位ターゲット4.3%

小売業としては、やはり世界のウォルマートが強くて業界トップを維持していますが、それでもシェアは16%程度となっています。アマゾンは2位に位置しており、9%程度とウォルマートを猛追している感じです。

ところが、これをEC市場での小売り業に限定すると、アマゾンは圧倒的な強者に早変わりする事になります。

EC市場企業名シェア
1位アマゾン38.7%
2位ウォルマート5.3%
3位イーベイ4.7%
4位アップル3.7%
5位ホームデポ1.7%

アマゾンは、EC市場において業界の3分の1以上を占める38%ものシェアを確保しており、しかも第2位のウォルマートはたった5%程度のシェアしか取れておらず、アマゾンの7分の1程度の規模しかありません。

EC市場に限定すると、アマゾンは圧倒的な強者となっているのです。

この点を、カーン氏率いる米連邦取引委員会は問題視しており、反トラスト法での提訴を視野にいれています。

まとめ

業績や利益については、まだ伸びる余地のあるアマゾン。従来は手を付けていなかった動画広告を手掛ける事で収益性は高まっていきます。

また、本業である北米部門での売上や利益も回復してきており、年末商戦においても強気な想定を行っている事から次期決算での業績は好調な結果となりそうです。

ただ、米連邦取引委員会は反トラスト法(独占禁止法)の適用を視野にいれながら動いているようであり、今週中には提訴する見込みのようです。

反トラスト法を適用されるとアマゾンにとっては非常に痛い展開となります。

ただ、提訴されたからといって反トラスト法が確定するという訳ではなく、今後のアマゾンと米連邦取引委員会との話し合い(駆け引き)によって、妥協が図られる場合もあります。

短期的には、広告収入の導入や年末商戦の拡大によって業績の向上が見込めますが、長期的には反トラスト法の影響があるかもしれませんね。

   

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