私が子供の頃(1980年代)の日本は世界トップの技術水準を持ち、メイド・イン・ジャパンは世界最高峰の製品だというイメージがありました。
ウォークマンなどの世界基準となる最先端の製品を作り上げていたり、コンピューター社会で必須の産業となる半導体産業では世界トップを走っていて、日本には世界最大の半導体メーカーが揃っており、高度な半導体を世界中に供給していました。
日本の商品はいつまでも世界トップに君臨していると思っていたよ
私も日本が世界を引っ張っていくと思っていました
かつては栄華を誇った家電メーカーやパソコンブランドも多くが海外企業との競争で没落していき、今では多くのメーカーが海外企業に買収されているか子会社となっています。
新しい製品を世に出す力も強くて、多くの製品を世界中に提供していた日本は、いつしか世界の後をついていくようになっていると感じます。
今回は、そんな世界に誇る日本の産業が衰退していくのではと感じてるお話です。
日本が世界に誇る産業
日本が世界に誇る産業として多くの人が真っ先にあげるのが自動車産業ではないでしょうか?
洗練されたデザインと細かな製造技術、それらが合わさった日本の自動車メーカーのクオリティは高く、ハイブリッド車などの先進的な自動車もいち早く開発していき、世界の自動車業界を牽引しています。
世界の自動車販売台数でも、日本のメーカーは数社が上位に食い込んでおり、その筆頭はもちろんトヨタ自動車ですよね。
世界の自動車販売台数(2021年度)
順位 | メーカー | 販売台数 |
---|---|---|
1位 | トヨタ自動車 | 972万4000台 |
2位 | フォルクスワーゲン | 636万2000台 |
3位 | ゼネラルモーターズ | 526万5000台 |
4位 | ヒュンダイ | 463万5000台 |
5位 | フォード・モーターズ | 442万4000台 |
世界のトヨタがこれからも自動車産業を引っ張っていってくれると思っていたのですが、近年の急速な電気自動車シフトをみていると出遅れているのではないかと感じる気持ちが年々大きくなっています。
世界の自動車メーカーは電気自動車へとシフト切っているのに、トヨタ自動車はようやく重い腰をあげて動き出したといった感じです。
EUのガソリン車の販売禁止
ベルギーのブリュッセルで開催されたヨーロッパ議会(EU)は2023年2月14日、ヨーロッパ域内でガソリン車などの内燃エンジンの乗用車・商用バンの新車販売を2035年から事実上禁止する法律を正式に承認しました。
これにより定められている排出ガス・ゼロとは、内燃エンジン車だけでなく、ハイブリッドやPHEVも禁止となり、電気自動車か燃料電池車(FCEV)しか許されない事になります。トヨタが提唱している水素を燃料とする内燃エンジン車はNOxを排出するため排気ガス・ゼロとは認められないようです。
ただ、流石に少し厳しいという意見が業界からも出ており、自動車大国のドイツからの強い要望もあり、温暖化ガス排出をゼロとみなす合成燃料の利用に限り販売を認めるみたいです。
二酸化炭素(CO2)と水素を合成して作る液体燃料「e-fuel」(イーフューエル)のみを使用する車両は販売できるようにするそうですが、合成燃料はガソリンの2~5倍と高額で、高級車などの限定的な利用にとどまる公算が大きいと予測されています。
基本的には、欧州では2035年からはガソリン車の販売が禁止となり、EV(電気自動車)が基本となります。
米国のガソリン車禁止
アメリカでは州ごとに法律が異なる為、アメリカ全体で統一されているわけではないが、現在はカルフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州、オレゴン州などの12の州が2035年までにガソリン車を禁止する事になっている。
これは今後、他の州にも拡大していく事と予測されており、米国において欧州と同じように2035年ごろにはガソリン車の全面禁止に向かって行く事になります。
段階的にガソリン車の販売量を制限していき、2026年までにガソリン車の販売量は65%に、2030年までに32%に、そして2035年には0%(販売禁止)へと進んで行く事になります。
ただし、欧州が掲げる排ガスゼロとは少し異なり、欧州においては純粋なEV(電気自動車)と燃料電池車(FCEV)しか許されないのですが、カルフォルニア州などの一部のプラグインハイブリッド車(電池だけで80キロ走行できる物)については販売が可能となっているようです。
中国のガソリン車禁止
中国政府は、環境問題やエネルギーセキュリティーの改善を目的として、2025年以降に新規に販売される乗用車の一定割合を、新エネルギー車(NEV)に限定する計画を発表しています。また、2035年以降についても、全ての新規乗用車の販売に対してガソリン車の販売比率を削減し、完全に禁止することを検討しているとされています。
現在、中国政府はNEVの推進に向けた政策措置を積極的に進めており、例えば、NEVの販売に対して補助金を提供することや、新規工場の建設においてNEVの生産比率を定めることなどが行われています。また、一部の都市では、NEVの普及を推進するために、ガソリン車の車両規制や道路使用制限なども実施されています。
中国政府は、環境保護と新エネルギー技術の推進を優先課題として位置づけており、2035年以降にはガソリン車の販売を完全に禁止することで、その目標に向けた取り組みを加速することが期待されています。
中国政府が設定しているNEV(新エネルギー車)に該当する車種は、電気自動車・燃料電池自動車・プラグインハイブリッド車となっています。中国が掲げる新エネルギー車にはプラグインハイブリッド車が含まれていますが、これは今後の世界情勢によっては削除される可能性があります。
米国企業・中国企業がリードするEV(電気自動車)
ガソリン車が徐々に販売禁止となっていき、EV(電気自動車)が主流となっていく今後の自動車業界において、現時点では米国企業や中国企業等が先頭を走っており、日本企業は全く歯が立たない状態というよりも、何もしていないに等しい状況だといえます。
では、ここで世界のEV販売台数のランキングをみてみましょう。
2021年の世界のEV(電気自動車)販売台数
順位 | 企業名 | 販売台数 |
---|---|---|
1位 | テスラ | 76万台 |
2位 | BYD | 47万台 |
3位 | フォルクスワーゲン | 34万台 |
4位 | 上汽通用五菱 | 30万台 |
5位 | NIO | 20万台 |
6位 | ゼネラルモーターズ | 18万台 |
7位 | フォード | 12万台 |
8位 | BMW | 11万台 |
9位 | 吉利汽車 | 10万台 |
10位 | ルノー | 9万台 |
もちろん、トップはテスラで2位がBYDなのですが、それ以降も米国企業と中国企業が多くランクインしており、たまに欧州企業が食い込んでくるぐらいです。
日本企業は全くランクインしていません。それもそのはずで、2021年度の日本国内のEV販売台数は僅か4万2580台であり、任全体の販売台数でさえ、トップ10にランクインしないぐらいの少ない販売量です。
しかも日本が誇るトヨタ自動車のEV販売台数はたったの1万5000台ぐらいだと推測されている事を考えると、世界のEV化の流れに全く乗れていない感じですよね。
世界のEV化は急速に進んでおり、2022年度の販売台数は前年度を大幅に超えてきています。2022年のEV販売ランキングをみても、各社の増加スピードは非常に高いのが分かります。
2022年の世界のEV販売台数
順位 | 企業名 | 販売台数 |
---|---|---|
1位 | テスラ | 131万台(1.7倍) |
2位 | BYD | 91万台(1.9倍) |
3位 | 上汽通用五菱 | 67万台(2.2倍) |
4位 | フォルクスワーゲン | 57万台(1.6倍) |
5位 | 吉利汽車 | 38万台(3.8倍) |
各社とも販売台数を大幅に伸ばしてきており、生産台数の拡大と共に利益の確保を急いでいます。急ピッチで拡大していくEV市場に日本は完全に乗り遅れていますね。
EV業界トップを走るテスラやBYDが100万台を超えるような水準の販売台数を叩き出している中で、日本ではまだ数万台に留まっている事を考えると、追いつくことさえ困難な状態になっているように感じられます。
まとめ
そもそも、ガソリン車の販売禁止は欧州や米国・中国などが国の基幹産業となる自動車産業の覇権獲得を目論んだ政治的な要因もありますが、日本だけがその流れに抗ったとしてもEVが世界的な主流となっていくのであれば、日本もその流れに乗らないと生き残れないです。
スタートダッシュに失敗した日本の自動車メーカーが挽回していく姿を想像するのが難しくなっているような気がしています。
かつて日本のお家芸であった家電や半導体・パソコンなどの産業も、気が付けば主導権を他の国の企業に取って代られ、主役の座から降りてしまう事になりました。
最後の砦ともいえる自動車産業において、ここでも日本が欧米に屈することがあれば、日本の産業の低下が懸念されます。
日本企業の巻き返しに期待はしたいのですが、現状を考慮すれば、自動車メーカーに投資をするのであれば、テスラやBYDの方に軍配が上がるのではないかと思っています。
世界の先頭を走っていた日本がドンドンとトップ集団からこぼれ落ちていくような感じを受けてしまうのが寂しいなと感じる今日この頃です。
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