他の国の株式に対する課税はどうなっているんだ？

日本の株式などの売却益（金融所得）に対して、課税を強化するという議論が上がってきている昨今。現状では売却益に対して一律 20％の税金が課されているのですが、これを 30％程度に引き上げようという意見もあり、投資家達からは批判が殺到していましたね。

個人の場合は、労働で得た給料から社会保険料などの税金が引かれており、残った手取りの中から節約しながら貯めたお金の一部をリスクを負ってまで投資をして増やした資金なのに再び税金を課されているわけだし、法人の場合でも法人税を支払って残った資金の一部を配当金として株主に支払っているのに再びその配当金に課税をするのだから二重課税と言われているよね。

さて、日本においては株式の売却益や配当金、預貯金の利子などは一律20％の分離課税となっていますが、他国の場合はどのような税務体制になっているのだろうか。ちょっと確認してみましょうか。

「各国の金融所得に対する課税制度」

国名	株式売却益	配当	預貯金利子
日本（一律課税）	20％	20％	20％
ドイツ（一律課税）	26.3％	26.3％	26.3％
フランス（一律課税）	12.8％	12.8％	12.8％
米国（税率変化）	0％～20％	7.5％～38％	0％～45％
英国（税率変化）	0％～20％	0％～20％	10％～37％
中国（一部非課税）	非課税	20％	非課税
韓国（一部非課税）	非課税	28％	5％～40％
シンガポール（非課税）	非課税	非課税	非課税

日本のように一律同じ税率を課す国もあれば、金額によって税率が変化する国もあり、アジアの国においては非課税の国が多いみたいですね。特に、シンガポールや香港のようなタックスヘイブンの国は金融所得は全て非課税となっていますね。まあ、シンガポールや香港は例外と考えてもいいですよね。

この中で、面白いなと思ったのは米国や英国が採用している金額によって税率が変化する課税制度です。

米国の場合は、給与所得や配当所得、株式売却益などの所得を全て含めて総合計所得を出したうえで、それぞれの所得に税率を振り分けていくみたいです。

で、米国の株式売却益（キャピタルゲイン）の場合は、独身（単身者）か結婚している（夫婦合算）によって異なるようで、総合計所得に対して次のような税率になるみたいです。

税率	0％	15％	20％
単身者	約725万円まで	約8,000万円まで	約8,000万円以上
夫婦合算	約1,450万円まで	約8,000万円まで	約9,000万円以上

単身者は、総合計所得が48,350ドル（約725万円）までは非課税で、533,400ドル（約8,000万円）までは15％、それ以上が20％となっているみたいで、夫婦合算の場合は、総合計所得が96,700ドル（約1,450万円）までは非課税で、600,050ドル（約9,000万円）までは15％、それ以上は20％となっているみたいですね。

これに更に加算して、単身者は200,000ドル（約3,000万円）を超える場合、夫婦合算は250,000ドル（約3,750万円）を超える場合は、その超えた金額に対して純投資所得（株式売却益・配当金、預貯金利子）の範囲内で純投資所得税の3.8％が加算される事になるようです。

具体的には、こんな感じの税率になるみたいだね。

「単身者（独身）」
給料　　　　５００万円
配当金　　　　５０万円
株式売却益　１００万円

合計所得　　　　６５０万円
株式売却の税率　　　０％
（合計所得が７２５万円以下だから）

「単身者（独身）」
給料　　　　　５００万円
配当金　　　　　５０万円
株式売却益　４０００万円

合計所得　　　　４５５０万円
株式売却の税率　　　18.8％
（合計所得 8,000万円以下で 15％、更に 3,000万円以上なので純投資所得税 3.8％加算）

金融所得が多くなれば、それだけ税率が高くなっていく。でも、所得が少なければ非課税になる。15％ぐらいの中間課税層の場合でも、対象合計所得金額が8,000万円以下となっているので、ほとんどの人々は15％ぐらいで収まるのではないかな。

米国では富裕層への課税強化のために、キャピタルゲイン課税強化を検討していて、現状は株式売却時は 20％が最高税率だけど、これを 100万ドル(約 1億5000万円)以上の所得がある場合は 39.6％にする案が出ているようだね。

日本でも１億円の壁の問題が出ているけれども、一律 20％の分離課税を一律 30％に引き上げるのではなくて、米国のように 1億円以上の場合は 30％にするなどの富裕層に限定して増税してくれるのであればいいなと思うんだな。