先週はジャクソンホールでパウエル議長の発言がありました。パウエル議長の発言内容によって今後の政策金利の動向を確認する事ができるため、ジャクソンホール会議は注目されていました。
利上げはもう終わったのではないの?
経済指標の状況によっては利上げ再開もあるかもしれないね
FRBが適切な金利設定を行い、インフレの軟着陸に上手く誘導する事が出来るのか?そして、景気悪化を避けて景気の持続を行うことが出来るのか?そんな市場の疑問に答える為に、パウエル議長の発言は重要だと言われています。
今回は、パウエル議長の発言内容をまとめてみました。
ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言
ジャクソンホール会議とは、カンザスシティ連邦準備銀行が米国ワイオミング州のジャクソンホールで毎年8月に開催する経済政策シンポジウムの事であり、世界各国から中央銀行総裁や政治家、学者などが参加し、世界経済や金融政策について議論を交わします。
そこで講演するパウエル議長の発言内容は非常に注目されており、FRBの今後の動きを確認する場となっています。
では、パウエル議長の発言内容を順番に見ていきましょう。
まずは、冒頭の「FRBのスタンスについて」から始まり、そして「インフレ低下」、「見通し」、「今後の想定に沿った不確実性とリスク管理」、「今後の方針」を順番にみていきたいと思います。
(FRBのスタンスについて)
「インフレを2%の目標に引き下げることはFRBの仕事であり、我々はそうするつもりです。私たちは過去 1 年間、政策を大幅に強化してきました。インフレ率はピークから低下しており、これは歓迎すべき展開ですが、依然として高すぎます。」
「我々は、適切であればさらに金利を引き上げる用意があり、インフレが我々の目標に向かって持続的に低下していると確信できるまで政策を抑制的な水準に維持するつもりである。」
これまでのインフレ低下について
(これまでのインフレ低下について)
「12 か月ベースで見ると、米国の合計、つまりヘッドラインの PCE (個人消費支出) インフレ率は 2022 年 6 月に 7% でピークに達し、7 月時点で 3.3% まで低下しました。これは世界の傾向とほぼ一致した軌道をたどりました」
「ロシアの対ウクライナ戦争の影響は、2022年初頭以降、世界中の総合インフレの変化の主な要因となっている。」
「総合インフレは家計や企業が最も直接的に経験するものであるため、この低下は非常に良いニュースだ。しかし、食料とエネルギーの価格は依然として不安定な世界的要因の影響を受けており、インフレがどこに向かっているのかについて誤解を招くシグナルを与える可能性がある。」
「12 か月ベースで、コア PCE インフレ率は 2022 年 2 月に 5.4% でピークに達し、7 月には 4.3% まで徐々に低下しました」
「6 月と 7 月のコアインフレ率の月次統計値の低下は歓迎されましたが、2 か月間の良好なデータはインフレが目標に向かって持続的に低下しているという確信を築くのに必要な始まりにすぎません。こうした低い数値がどの程度続くのか、あるいは今後数四半期にわたって基調的なインフレがどこに落ち着くのかはまだ分からない。12 か月のコアインフレ率は依然として高水準にあり、物価安定を取り戻すためには、さらにカバーすべき十分な基盤が存在します。」
見通しについて
(見通しについて)
「見通しに目を向けると、パンデミック関連の歪みがさらに緩和されることで引き続きインフレにある程度の下押し圧力がかかるはずだが、制限的な金融政策がますます重要な役割を果たす可能性が高い。インフレ率を持続的に2%に戻すには、一定期間の経済成長がトレンドを下回る期間が必要となるほか、労働市場の状況がある程度軟化することが予想される。」
「制限的な金融政策により金融環境が逼迫し、トレンドを下回る成長が見込まれることが裏付けられています。しかし、私たちは経済が予想ほど冷え込んでいないかもしれないという兆候に注意を払っています。今年これまでのところ、GDP(国内総生産)成長率は予想を上回り、長期的な傾向を上回っており、個人消費に関する最近の指標は特に堅調だ。」
「さらに、過去 18 か月間で急激に減速した住宅セクターは回復の兆しを見せています。持続的にトレンドを上回る成長を示す追加の証拠があれば、インフレのさらなる進展が危険にさらされる可能性があり、金融政策のさらなる引き締めが正当化される可能性がある。」
「労働市場のリバランスは過去 1 年間継続して行われてきましたが、依然として不完全です。25歳から54歳までの労働者の参加強化と移民の増加がパンデミック前の水準に戻ったことにより、労働力の供給は改善した。この労働市場のリバランスは今後も続くと予想されます。労働市場の逼迫がもはや緩和していないという証拠は、金融政策の対応を必要とする可能性もある。」
今後の方針の沿った不確実性とリスク管理について
(今後の方針に沿った不確実性とリスク管理について)
「2% のインフレ目標は今後も維持されます。我々は、インフレ率を長期にわたってその水準まで低下させるのに十分な制限的な金融政策スタンスを達成し、維持することにコミットしている。もちろん、そのような姿勢がいつ達成されたかをリアルタイムで知ることは困難です。」
「現在の政策スタンスは制限的であり、経済活動、雇用、インフレに下押し圧力をかけていると我々は見ている。しかし、中立金利を確実に特定することはできないため、金融政策抑制の正確なレベルについては常に不確実性が存在します。」
「金融引き締めが経済活動、特にインフレに影響を与えるタイムラグの期間に関する不確実性によって、その評価はさらに複雑になる。こうした従来の政策不確実性の原因に加えて、このサイクルに特有の需要と供給の混乱は、インフレや労働市場の動態への影響を通じてさらに複雑さを引き起こしています。」
「こうした新旧の不確実性は、金融政策を引き締めすぎた場合のリスクと緩め締めすぎた場合のリスクとのバランスを取るというわれわれの課題を複雑にしている。対策が少なすぎると、目標を上回るインフレが定着し、最終的には雇用に高いコストをかけて経済からより持続的なインフレを引き出す金融政策が必要になる可能性がある。やりすぎると経済に不必要な悪影響を与える可能性もあります。」
今後の方針について
(今後の方針について)
「よくあることですが、私たちは曇り空の下、星を頼りに航海しています。このような状況では、リスク管理を考慮することが重要です。今後の会議では、データの全体性と進化する見通しとリスクに基づいて進捗状況を評価する予定です。この評価に基づいて、我々はさらなる引き締めを行うか、それとも代わりに政策金利を据え置き、さらなるデータを待つかを決定する際に慎重に作業を進めていきます。」
「物価の安定を回復することは、我々の二重の責務の両面を達成するために不可欠である。すべての人に利益をもたらす好調な労働市場状況を持続させるためには、物価の安定が必要となる。」
「仕事が完了するまで、私たちはそれを続けます。」
まとめ
ジャクソンホール会議の前日の米国株市場はジャクソンホール会議のでパウエル議長の発言を警戒して非常に大きく下落しました。
しかしながら、ジャクソンホール会議後の株価は落ち着きを取り戻しています。
ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言はタカ派的な内容であったのですが、それでも発言内容は想定の範囲内であり、特に予想を上回るような強い内容がなかった事から、市場は平常運転に戻っています。
市場の想定では、9月の利上げはないという想定になっていますが、その次の11月のFOMCについては、現状維持と利上げ実施の2つの判断が五分五分なるほど意見が分かれています。
従来は、もう利上げはないという意見が大半だったのですが、ここにきて再度利上げの可能性が浮上してきました。
再利上げが行われるようであれば、株式市場はもう一波乱がある展開になるかもしれませんね。
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