今回のアマゾンの決算にてカンファレンスコールを確認している時に気が付いた事や知らなかった事、勘違いしていた事がいくつかありました。今回はそれについて少し触れながら話を進めてみたいと思います。
私は、投資する上で一番手堅く安定して投資できる企業はマイクロソフトだと思っています。盤石のオフィスソフトを持っており、そこからあがる資金力によって次の成長への足掛かりとしています。大抵は後追いになりながらも、既存のソフトに絡めながら普及を進めて気が付けばスタンダードを手に入れるのがマイクロソフトです。
オンライン会議でも、ズームが独壇場だったはずなのにいつの間にかマイクロソフトの「Teams」が猛追しており、大企業などはTeamsが主流となっています。オンライン会議は大企業を中心に残っていく(今後も利用していく)事になるが中小企業などは利用が縮小していくと言われています。
気が付けば、ズームよりもTeamsが生き残る結果となっていると思います。
一方でアマゾンは、自らが新しい価値・新しい技術・新しい市場を創り出す事で成長を続けていく企業です。だからこそ、アマゾンは安定して成長するというよりは高成長する可能性を秘めている大企業という捉え方をしています。
今回は、そんなアマゾンの次なる成長の姿についてのお話です。
従来の柱と今の柱
本のインターネット通販から始まったアマゾンという企業。
その後は取扱い品目を増やしていき、今ではあらゆるものを取扱っているインターネット通販を確立しています。アマゾンと言えば本の通販企業だったのが、気が付けば総合ネット通販企業へと成長していきました。アマゾンはネット通販のプラットホームを作り上げ、ネット通販におけるガリバーとなっています。
アマゾンの業績におけるネット通販での売上は約70%を占めており、アマゾンの主力事業として業績を牽引しています。
アマゾンの業績を牽引しているのがネット通販なんのですが、今のアマゾンを本当の意味で牽引しているのはクラウド事業です。
皆さんもご存知のようにアマゾンのクラウドであるAWSは、アマゾンの売上の15%程度しか占めていません。売上という面からするとアマゾンを牽引しているのは今でもネット通販事業という事になります。
しかしながら、営業利益という面になればアマゾンの利益の大半を稼いでいるのがクラウドであるAWSになります。ネット通販事業は今は赤字であるので、利益に関してはほぼAWSにおんぶに抱っこ状態のなっています。
ゆえに、今のアマゾンの柱といえば、通販事業ではなくクラウド事業であり、AWSこそがアマゾンの現在の柱となっています。
現実的な今後の柱
現実的に次の柱になる事業として期待されているのは、「広告事業」です。
広告事業については、現在の広告事業の世界的な企業はアルファベット(グーグル)とメタ(フェイスブック)の2社になります。特にインターネット広告の分野に限ればアルファベットとメタは群を抜いた存在となっています。
その盤石の2強体制に楔を打ち込んだのがアマゾンですよね。
圧倒的なネット通販サイトとしてのプラットホームをいかして広告戦略を加速させてきており、今ではインターネット広告業界においてアルファベットとメタを猛追して3位という位置に入りこんでいます。。
アマゾンの事業の中でも、広告事業は年々存在感を増しており、数年前までは「その他の事業」というくくりで色々な事業の売上と合わさった場所に広告事業の売上も計上されていましたが、広告事業が成長してきたことによって「広告事業」として単独で売上を計上するようになっています。
広告事業はアマゾンの中で一番高い成長率を誇っており、売上も急スピードで拡大しています。1年前まではAmazon Prime会員などの会費や利用料が計上されている「サブスクリプションサービス事業」の方が売上が多かったのですが、今では広告事業の方が高い売上を叩き出しています。
売上の規模が大きい順位にあげると、ネット通販事業、クラウド事業、そして広告事業となっており、名実ともにアマゾンの次なる柱として存在感を増しています。
将来的な事業の柱
アマゾンの従来の柱が「ネット通販事業」。そして、今のアマゾンの柱が「クラウド事業」。更に今後のアマゾンの柱が「広告事業」だとすると、将来のアマゾンの柱となる事業は何なのだろうか?
アマゾンの強さは、ここにあると思っています。つまりは、未来の柱を作り続けている企業だという事です。
すでにネット通販事業会社として大きな成功をおさめています。通常の企業であればネット通販事業だけで生きていきます。しかしアマゾンは次なる成長を常に模索していきます。そして、クラウド事業という金の鉱脈を見つけ出したのです。その後は、広告事業を育てていき、更に盤石の体制を築いていきます。
そんなアマゾンが将来的な事業として見据えているのが、幾つかあります。
- ストリーミングエンターテイメント機器
- ヘルスケア
- 低軌道衛星
ストリーミングエンターテイメント機器
動画ストリーミング機器「Fire TV」やスマートスピーカー「Echo」などを開発し、低価格で販売する事でデバイスの普及拡大に努めています。
これらはお客様の時間を先取りするための先行投資であり、人々が使う余暇時間をアマゾンの為に使ってもらうための種蒔きです。
将来的には、電気自動車による自動運転などで出来た移動時間などの活用をアマゾンが取り込むための先兵となっています。車の車載インフォテインメントのプラットホームとなれればお客様の莫大な時間を手に入れる事が出来るようになります。
その布石のために、多額の研究開発費を投じて先行投資を続けています。
ヘルスケア事業
人々がヘルスケアに使う金額は非常に大きな金額になっており、ヘルスケア関連に伴う支出は世界のGDPの10%に相当すると言われているぐらいの巨額な市場です。
従来は、医薬品や医療行為などは独占的な事業とされており、旧体制の企業等が牛耳っている分野でもあり、非効率は商行為や中抜きなどが当たり前の行為として行われています。
ドラッグストアの買収や処方箋の認可取得、調剤分野への進出、と少しずつヘルスケア分野に侵食してきています。
本屋がアマゾンに食いつぶされたように、百貨店がアマゾンに食いつぶされたように、トイザらスのような専門店がアマゾンに食いつぶされたように、ヘルスケア業界へも殴り込みをかけています。
ヘルスケア業界への進出は、まだまだ何も成果を上げていませんが、ひとたび軌道に乗ればヘルスケア業界を牛耳る可能性を秘めています。
低軌道衛星
人工衛星を使ったインターネット接続サービス構想の実現に向けてアマゾンは巨額の研究費用を捻出しています。
アマゾンは通信サービスが行き届いていない地域でも大容量で遅延の少ないブロードバンド(高速大容量)通信サービスを提供できるようになる低軌道衛星の打ち上げや開発を急ピッチで進めています。
数万基の小型の低軌道衛星を打ち上げて地球全体をカバーするネットワーク網を構築していき、これによる低コストで遅延の少ないデータ通信が可能になるとされています。低軌道衛星が通信ネットワーク網を構築すれば、現在の海底ケーブルによる通信インフラは不要となり、従来の通信インフラを根底から覆す存在となります。
このような低軌道衛星による通信網を構築できる企業は限られており、それらの企業が低軌道衛星での通信網を独占する事で巨額の利権を手に入れる可能性が発生します。ゆえに、マスク氏のスペースXやアマゾンのKuiperなどは激しい開発競争を繰り広げているのです。
全てが成功するわけではない
こういった新規事業開発で成功する事は至難の技でもあります。そう簡単に成功する事業が見つかるわけでもなく、むしろ失敗する事の方が多いの現状です。
ゆえに通常の企業であれば、あれもこれもと矢継ぎ早に手を出す事はしていません。
それでもアマゾンは次なる柱を探し求めるために、新たな領域へチャレンジを続けています。
カンファレンスコールでも、新しい事業へと投資を続けていく事の価値について語っていました。
まだ誰もなしえていない事業やすでに出来上がっている市場に新しい風を吹き込み旧体制を崩していくには、多額の資金をつぎ込む必要があります。しかし、多額の資金をつぎ込んだからといって成功するとは限りません。
失敗を恐れて現状に満足していては、新たな成長は望めません。チャレンジするからこそ新しい果実を手にする事が出来ます。そうやって生まれたのがAWSなのです。
でも、普通の企業では現状を維持する事を優先して、失敗を回避するのが通常です。アマゾンのように失敗してでも新しい事にチャレンジする企業は稀です。
普通は、サンクスコスト(今までつぎ込んできた資金や時間・人材)が無駄になる事を恐れて、損する事が分かっていてもズルズルと決断を先送りにしてしまいます。アマゾンは今まで数多くの失敗をしてきています。しかし、ダメだと思ったらすぐに諦めて次の事業を探し求めていきます。
常に次なる事業の柱を探し求めて、それが無駄だと判断すれば即座に切り捨てて、また新しい事業を探し求める。こういったサイクルを回す事が出来ているところがアマゾンの強みなのだと思います。
まとめ
アマゾンは、ネット通販の世界最大手企業です。そしてネット通販の企業としてだけでも充分に大きく成長する事が出来ます。でも、それだけでは飽き足らず、次なる成長の種を探し求めています。
そして行き着いた先が、クラウド事業です。
AWSはアマゾンの利益の大半を産み出す金の卵としてアマゾンの成長を力強く支えています。
今は大きく稼いでいるクラウドもいつかは稼げなくなる時が来るかもしれません。
そんな時に、次なる成長のエンジンとなるものを仕込んでいく事が出来るのがアマゾンの強みなのだと思います。
今、種をまいている物は芽を出すかどうかも分かりません。でも、種をまき続けていればいつかは何かが花開くことがあるはずです。そして、そんなチャレンジを続けていくからこそ、大企業でありながらグロース企業であり続ける事が出来るのです。
駆け出しのグロース企業に投資をするよりも、アマゾンに投資をしておけばグロース企業の醍醐味と大企業の安心感の両方を兼ねる事が出来るのです。
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