いよいよ年末も近づいてきて今年もあと少しで終わりますね。今月になると急に寒さも厳しくなってきて、冬本番の訪れが感じられるよね。今年の株式市場の取引日(営業日)も残り僅かになってきたので、「損出し」の話題もチラホラと聞こえてくるよね。
年末になると、損出しの話題が多くなるよね
お金が一時的に戻ってくるので得した気分になるよね
損出しとは、すでに利益確定していて税金を支払う必要がある分にたいして、含み損がある銘柄を売却する事で利益を少なくして課税対象を減らす方法だよね。利益と損失を相殺させて税金を一時的に取り戻す方法ともいえるよね。
簡単に例を挙げると、100万円の利益が出ている銘柄を売却したら100万円に対して20%の税金が掛かるよね。特定口座(源泉徴収あり)だと自動的に口座から20万円が税金として源泉徴収されていく事になるんだ。そこで、含み損がある銘柄があれば、いったん売却して利益と相殺させることで源泉徴収されていた金額を取り戻すことが出来るんだ。
100万円の利益確定がある状態で、含み損が100万円ある銘柄を売却すれば、差し引きで利益も損失もない状態になるよね。
100万円(利益)-100万円(損失)=0円
そうすれば、利益確定の時に支払っている税金の20万円は戻ってくることになるんだよね。
損出しは、年間で確定利益がある時に、いったん含み損の銘柄(銘柄B)を売って、その銘柄(銘柄B)を同じ値段で買い戻しておくという方法を使って、銘柄Bの保有を続けながらも支払い済みの税金を取り戻す方法だよね。
こうやって書くと、損出しって「得する」と思えるんだけど、これって結局は税金の先送りをしているだけで、実は後で同じ金額の税金を支払う事になるから、得しているという訳ではない点には注意をしておく必要はあるんだよね。
税金の先送りについて説明すると次のようになるんだ。まずは、次のような前提で考えてみよう。
- Aという銘柄を利益確定しており、100万円の利益がある。それに対して20%の税金が掛かるから20万円が源泉徴収されている
- Bという銘柄を200万円で購入している。この銘柄が100万円まで下がってしまった。でも、その後は再び買値である200万円にまで戻ってきた
この前提で、「損出ししなかった場合」と「損出しした場合」を比較してみよう。
「損出しをしない場合」
すでにA株は100万円の利益確定をしており、20万円の税金を源泉徴収されている。
200万円で購入した B株が100万円まで下がってしまったけど、我慢して売らずにそのままホールドを続けていたら、ようやく買値の200万円まで戻ってきたので、そこで売却する事にした。
(支払った税金)
A株 20万円
B株 0円
合計 20万円+0円=20万円
「損出しをした場合」
すでにA株は100万円の利益確定をしており、20万円の税金を源泉徴収されている。
200万円で購入した B株が100万円にまで値下がりした。そこで「損出し」を行った。これにより B株は、200万円(買値)−100万円(売値)=100万円の損失となる。
A株で100万円の利益、B株で100万円の損失となるので、差し引きで年間の取引損益は0円となる。
100万円(A株の利益)−100万円(B株の損失)=0円(年間の取引損益)
すでに、A株の売却時に20万円の税金を支払い済(源泉徴収されている)であるが、B株を損出しした事により、年間の取引損益は0円となるので、支払った税金の20万円は支払い過ぎの税金分として後日特定口座に返還される事となる。
さて、「損出し」をするという事は、B株は売却したと同時に再び同じ値段で買い戻すことになるよね。なので、100万円で売却したB株は、再び100万円で買い戻しているよね。
B株は、その後200万円にまで上昇する事になる。元々の買値である200万円にまで戻ってきたので、ここで利益確定をしてB株を売却する。
200万円(売却金額)−100万円(損出し時の購入金額)=100万円(利益)
100万円(利益)×20%(税率)=20万円(税金)
(支払った税金)
A株 20万円(源泉徴収)−20万円(損出しによる返還金)=0円
B株 20万円
合計 0円+20万円=20万円
損出しをしても、損出しをしなくても、結局は支払う税金の金額は20万円で変わりはなく、得も損もしていないんだよね。なので、損出しをすれば支払った税金が戻ってきて得をするという訳ではないよね。
結局は、損出しは税金を支払うタイミングを先送りするという事になるだけなので、金額的に得をするという訳ではないんだ。
では、損出しをするメリットとは何だろう。
それは、戻ってきた資金(税金)を有効活用する事で資金効率がよくなるという事なんだと思うよ。
例えば、先ほどの例で、B株を損出しをする事で20万円が戻ってきたとする。戻ってきた20万円を再び投資に回してS&P500などのインデックス投資で運用しておく。B株を売却した時に、結局は20万円の税金を支払う事になるのだけど、損出しした際に戻ってきた20万円を運用していて、例えば10%の株価上昇をしていれば、22万円になっているから2万円は増えている事になるよね。
20万円(損出しの返還金) → 運用 → 10%上昇 → 22万円
22万円-20万円(B株売却時の税金)=2万円増えている
こうやってみると、損出しってお得なやり方だと感じるかもしれないけれども、注意しないといけない点は、戻ってきた税金は必ず再び支払う必要があるという事を忘れない事だね。なので、戻ってきた20万円は増えたわけではなく、数年後(B株売却時)には必ず支払う必要があるよね。
このケースでは、運用した20万円は増えているという仮定にしているけれども、運用した20万円が減ってしまっている事もあるよね。運用していた20万円が10%下がって18万円になっていたら、B株売却時には20万円支払わないといけないので、2万円損した事になるよね。
なので、結局は損出しした資金で運用する事はもろ刃の剣ともいえるかもしれないんだな。
でも、基本的にはインデックス投資などであれば長期的には右肩上がりになっている可能性が高いという前提を考慮すれば、損出しで戻ってきた税金を運用しておけば後で税金を支払う時よりも増えている可能性が高いと思えるので、損出しをして戻ってきた税金を運用していく事は良い方法なのではないかなと思うよ。
損出しのメリットは、税金が取り戻せるのではなく、税金の支払いを先送りする事で、その資金(税金)を運用して、少しでも増やすことが出来る可能性が高いという事なんだと思うよ。
そしてもう一つは、損出しする事で証券会社の口座内においては、見かけ上はポートフォリオの損失(含み損)が消えるので、心理的にも安心しながら長期保有を続ける事が出来るという点もあるんじゃないかな。
損出しすると、「税金が戻ってくるからお得だよ」と言う人もいるけれども、実際は何も得などしておらず、税金の先送りをしているだけで、戻ってきた税金は同額を後で必ず支払う必要があるんだ。
損出しをしてお得になるためには、その資金を運用してプラスリターンにならないといけないんだな。
確実に損をしないためには、株式などで運用するのではなく、貯金や国債などを購入して確実に利息を受け取るとか、外貨建てMMF(為替変動は考慮しない前提)にいれて利息を受け取るなどの、元本が減らない方法を検討するのもいいかもしれないね。
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