普段は日本で生活している私達にとっては米国の銀行に馴染みがないですよね。ゴールドマンサックスやJPモルガン、バンク・オブ・アメリカなどの有名銀行なら知っているけど、破綻したシリコンバレー銀行やファースト・リパブリック銀行などは聞いたことがない人の方が多いのではないでしょうか。
今回破綻したシリコンバレー銀行やファースト・リパブリック銀行は大口預金顧客(25万ドル以上)の比率が高く、それが預金流出の大きな要因となり、それが破綻の原因の一因にもなりました。
米国の銀行の預金金額ランキングって、どんな感じなのかな?
大口預金顧客比率が高い銀行って他にもあるのかな?
順番に、ご説明していこうと思います!
日本の銀行と違って、馴染みがない米国の銀行。なので、基本的な米国の銀行のランキング(預金残高)や大口預金顧客比率が高い銀行などをご紹介しながら、破綻した銀行の流れを考えながら今後に危ない状況に陥る可能性がある銀行をあげていきたいと思います。
それでは、今回は米国の銀行の基本情報と今後に危ない銀行のお話です。
米国銀行の預金金額ランキング
日本の銀行のランキングをあげてみてと言われると、正確なランキングではなくても大体の大手5社ぐらいは多くの方々が言えると思います。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行、りそな銀行などですよね。
「では米国の銀行は?」と聞かれると、すぐには思い浮かばなかったりしますよね。なので、まずは米国の銀行ランキングを確認してみましょう。
米国銀行の預金残高ランキング
順位 | 銀行名 | 預金残高 |
---|---|---|
1位 | JPモルガン・チェース | 3兆2000億ドル |
2位 | バンク・オブ・アメリカ | 2兆4200億ドル |
3位 | シティ・バンク | 1兆7700億ドル |
4位 | ウェルス・ファーゴ | 1兆7200億ドル |
5位 | U.S.バンコープ(U.S.バンク) | 5850億ドル |
6位 | PNCバンク | 5520億ドル |
7位 | トゥルーイスト・バンク | 5460億ドル |
8位 | ゴールドマン・サックス | 4870億ドル |
9位 | キャピタル・ワン | 4530億ドル |
10位 | TDバンク | 3870億ドル |
11位 | バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | 3250億ドル |
12位 | ステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト | 2980億ドル |
13位 | ファースト・シチズンズ・バンク | 2260億ドル |
14位 | ファースト・リパブリック・バンク | 2130億ドル |
15位 | モルガン・スタンレー・プライベート・バンク | 2100億ドル |
16位 | シリコンバレー・バンク | 2090億ドル |
17位 | フィフス・サード・バンク | 2060億ドル |
18位 | モルガン・スタンレー・バンク | 2010億ドル |
19位 | M&T・バンク | 2000億ドル |
20位 | キー・バンク | 1880億ドル |
「JPモルガン・チェース」、「バンク・オブ・アメリカ」、「シティバンク」、「ウェルス・ファーゴ」の4大銀行が日本における4大銀行に該当する巨大銀行ですね。
5位のU.S.バンコープは地方銀行最大手の銀行となります。私達が時折名前を聞くことがあるゴールドマン・サックスやモルガンス・タンレーは純粋な銀行業務においてはそれほど大きくはないみたいですね。
大口預金顧客率のランキング
さて、今回破綻したシリコンバレー銀行やファースト・リパブリック銀行は大口預金顧客の比率が高かったです。銀行が破綻した時に米連邦預金保険公社(FDIC)から保証されるのは、25万ドルまでの預金であり、それを超える金額を預けている大口預金顧客は銀行が危なくなると資金の移動(資金流出)を始めます。
そして資金の流出は、それは大口預金顧客の比率が高ければ高いほど、多くなってしまいます。大口預金比率が高かったシリコンバレー銀行(大口預金比率88%)やファースト・リパブリック銀行(大口預金比率67%)は、やはり資金流出が激しくなり、持ちこたえられなくなって破綻しました。
では、破綻したシリコンバレー銀行(88%)、シグネチャー銀行(90%)、ファースト・リパブリック銀行(67%)以外の銀行で大口預金比率が高い銀行は何処なのか確認してみましょう。
大口預金比率が50%以上の地方銀行
順位 | 銀行名 | 大口預金比率 |
---|---|---|
1位 | ウェスタン・アライアンス | 62% |
2位 | コメリカ | 58% |
3位 | ザイオンズ | 53% |
4位 | サイノバス | 51% |
5位 | USバンコープ | 50% |
これらの銀行は破綻した3行と比べると大口預金比率は低くなりますが、それでも一般的な銀行の大口預金比率と比較すると高い比率となっています。そして、大口預金比率が高い程、有事の際に資金流出が激しくなりやすい傾向にあります。
では、これらの銀行がどれくらいの預金残高を保有していて、銀行ランキングではどのくらいに位置しているのかを確認してみましょう。
大口預金比率が高い地方銀行の預金残高や銀行規模
大口預金顧客の比率が高かった「ウェスタン・アライアンス銀行」、「コメリカ銀行」、「ザイオンズ・バンコーポレショーン」、「サイノバス・フィナンシャル・コーポレーション」、「U.S.バンコープ」がどのくらいの預金残高を保有しているのか見てきましょう。
大口預金比率の高い地銀の預金残高とランキング
銀行名 | 預金残高 | 預金残高ランキング | 大口預金比率 |
---|---|---|---|
U.S.バンコープ | 5537億ドル | 5位 | 50% |
コメリカ銀行 | 882億ドル | 22位 | 58% |
ザイオンズ | 806億ドル | 24位 | 53% |
ウェスタン・アライアンス | 407億ドル | 35位 | 62% |
サイノバス | 348億ドル | 39位 | 51% |
先日に破綻したファースト・リパブリック銀行やシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行の破綻は、歴代において破綻した銀行の2位~4位を占める事になりました。
それらの規模は、ファースト・リパブリック銀行が預金残高2291億ドルで14位、シリコンバレー銀行が2090億ドルで16位、シグネチャー銀行が1130億ドルで29位でした。
コメリカやザイオンズ、ウェスタン・アライアンス、サイノバスなどは、これらの銀行と比較すると規模がまだ小さいのですが、U.S.バンコープは預金残高5537億ドルで第5位の銀行となっており、非常に大きな規模の銀行となります。
ちなみに、リーマンショックの原因となった破綻したリーマンブラザーズの資産規模が6390億ドルなので、預金残高5537億ドルで全米第5位のU.S.バンコープが破綻するような事があれば、間違いなく大混乱必至となります。
商業用不動産の含み損
これらの銀行は、富裕層向けや中小企業向けに特化したサービスを提供しており、長期低金利下で融資や債券投資を拡大してきました。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにより、資産価値の減少や資金調達コストの上昇に直面しています。また、預金流出や信用不安の拡大にも備える必要があります。これらの銀行は、流動性リスク管理や収益力向上に努めるとともに、規制当局からの監督も厳しく受けることが予想されます。
特に地方銀行は、商業用不動産に融資を多くしています。不動産は地域に密接するものなので、地銀のほうがたくさん持っているということのようです。
米国のCRE(商業用不動産)向け融資残高の6割近くは銀行が保有し、そのうち7割程度を資産規模の比較的小さい銀行が持っています。市況悪化時にこうした銀行で損失が膨らみうるとして、FRBが監視を強化しています。商業用不動産向け融資で地方銀行は市場全体の3割程度のシェアを持っています。
米国経済が減速を強めていけば、銀行が保有する貸出債権、あるいは証券の価値が下落することで、再び資本不足の懸念が高まり、銀行経営不安が再燃する可能性があるかもしれません。
こういったリスクの懸念が高まっている事は、先日のファースト・リパブリック銀行が破綻して、JPモルガンチェースが買収した際にも確認出来ます。
JPモルガンとFDIC(米連邦預金保険公社)は今回の買収で、ファースト・リパブリック銀行から引き継ぐ住宅ローンや商業用ローンで損失が発生した場合、今後5年~7年はFDICが損失の8割を負担する契約を結んでいます。
JPモルガンはファースト・リパブリック銀行を救済するとしても、今後の状況次第ではその損失を被る可能性が高い事を予測して、救済する条件として商業用不動産などで損失が出たとしても、その大部分をFDICが肩代わりする事を求めていたのです。
これはファースト・リパブリック銀行だけに限った事ではなく、商業用不動産などに融資しているものは焦げ付いたり、含み損になってしまう可能性があり、そういったものを取り扱っている銀行などは収益が悪化する可能性があります。
例えば、U.S.バンコープは米国でも商業用不動産(CRE)に多く融資している銀行の一つです。同社の2020年第4四半期の財務報告書によると、同社のCRE融資残高は約1,000億ドルで、総貸出残高の約25%を占めています。
このあたりが損失を出していくと経営状態に重くのしかかっていきます。
他への預金流出
25万ドルの預金保険の上限を上回る大口預金の比率が高いなどで、預金流出のリスクが相対的に高い中小銀行などでは、収益への悪影響を無理に受け入れてでも高い預金金利を設定して、預金流出を食い止めようと動き出しています。
ただ、金利引き上げで預金の流出を食い止めようとする米国の銀行にとって、新たな脅威となっているのが、アップルとゴールドマン・サックスが提携して、4.15%の高い金利設定を行っている新たなデジタル預金口座などです。従来の銀行の平均預金金利と比べて10倍を超える異例の高い金利水準となっています。
また、MMF(マネー・マーケット・ファンド)なども政策金利の上昇に連動して高金利となっており、銀行口座の預金がMMFにも流れつつあります。
米国では銀行が破綻した場合、1口座あたり25万ドル(約3400万円)保護される制度があります。しかしながら米国の銀行全体では預金保護の対象となる預金だけでも約10兆ドルあり、それに対して預金保険公社(FDIC)が保有している資金はその1.3%程度しかありません。全ての銀行を救済する事は不可能です。
FDICが保有していた資産は、去年末時点では1280億ドルだったが、今回の3つの銀行への破綻処理によって360億ドルを使っており、保有資産の約3割をすでに使用した状態です。
今後も銀行の破綻が続くようであれば、資金が枯渇する恐れがあり、これらの事を意識した大口預金顧客がより安全な場所へと資金を移動する動きがある事も預金流出を抑えられない原因となっています。
まとめ
政策金利の上昇によって、銀行が債券などに投資をしていた分に関しては含み損が出ている状態となっています。
また、商業用不動産などへの融資についても、その資産価値が悪化していくようであれば銀行の収益に悪影響を及ぼしていきます。
これらによって銀行の経営状態が不安定になると、預金者は預金を引き上げようと動き出す事があり、特に大口預金顧客の比率が高い銀行は、その動きがより顕著になってしまいます。
こういった事を懸念して、大口預金顧客が高いU.S.バンコープやコメリカ銀行などは、年初来より株価が大きく下落しており、コロナショックの時の安値とほぼ同じぐらいの水準にまで下がっています。
それほどにまで投資家達はこれらの銀行を不安視しており、今後の動きに注目しておく必要があると思います。
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