米国IT企業の凄さ

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最近まで時価総額世界ランキングでトップの地位に君臨していたアップル。最近の業績低迷に押されて株価も低迷しており、ついに時価総額トップの座をライバル企業のマイクロソフトに奪われてしまいました。時価総額トップの地位から転落したとはいえ、時価総額は依然として他社を圧倒する水準となっており、米国が誇る巨大IT企業です。

iPhoneとかのアップル製品は使い勝手がいいよね

斬新で、かつ消費者の目線に立った商品開発が素晴らしいですよね

IT業界でも世界トップクラスに位置するアップルですが、そんな巨大で素晴らしい技術を持っている企業でも、上手くいかない事もあるみたいです。

先日、アップルは期待されていたEV開発について計画を白紙撤回すると発表していました。自動運転技術を搭載した最新の電気自動車(EV)を開発するという野心的な10年がかりのプロジェクトを中止する事になりました。

アップルは、2014年ごろからEVの開発に取り組んでおり、数十億ドルを投資しながら、自律走行ができるEVの開発を目指していて、リムジンのような最高級の内装と音声ナビゲーションを備えた最新のEVとなる予定でした。販売価格も10万ドル(1500万円)という高級路線となっていて、富裕層を中心に熱狂的なアップル信者に支持されると想定していたようです。

しかしながら、膨らむ開発費用と今後必要となる車両生産の為の設備投資を考慮すると、更に巨額の追加投資が必要となり、そこまで莫大なコストを掛けても得られる利益がiPhoneなどの他のアップル商品と比べると遥かに低利益となる可能性が高く、場合によっては利益すら出ない可能性もありました。

商品としてEVを販売出来れば、まだマシなのですが、巨額の追加投資をしてもなお、販売すら出来ずに日の目を見ずにEV計画が終わってしまう可能性もあります。最近は、他のEV企業の販売が振るわずに、他のEVメーカーもEV販売に苦戦している中で、EV開発を続けていっても更なる苦難が待ち受けているだけとなります。

そこで、アップルはEV開発を白紙撤回して、そのスタッフをAI部門へと振り替える事にしました。今後は、生成AIのプロジェクトに注力する事となります。この判断によって、アップルの株価は1%ほど上昇していました。

アップルなどの米国IT企業が凄いなと感じる点は、新しい技術・産業に惜しみなく巨額の投資をしていくという判断がすぐに出来るという事と、それが上手くいかないと判断するとすぐさま中止・撤回するという機敏さです。

通常は、サンクスコストが働いて、進んでいるプルジェクトを中止する判断がなかなか出来ません。サンクスコストとは、投資したにも関わらず回収できない費用の事です。例えば、1億円の投資をしているのに、それを途中で中止すると1億円が丸々損失となります。お金だけでなく、そこに費やした時間や人材も無駄となります。事業として効果が見込めないのであれば、即刻中止すべきなのですが、今までつぎ込んだ費用の事を考えたら、途中で引き返す事が難しく、損失を確定して中止という判断をするのは難しいのです。

日本の企業などはこの判断が苦手で、責任をたらいまわしにして誰も責任を取らずに、無駄だと思っていてもズルズルと判断を先送りにしてしまいます。評価が減点法である日本企業では、一度失敗すると出世レースからはじき出されて、二度と戻ってくることはできません。失敗を過度に恐れるあまり、動き出したプロジェクトを中止させて損失を確定させる事は非常に困難になります。

その点、米国大手IT企業は失敗しても、すぐに中止して次の取り組みに全力を挙げる事で挽回しており、新しい取り組みに次々と手を付ける事で、事業を拡大しています。

アマゾンのクラウドも、こういった新しい事に取り組んでいく姿勢が新たな金の鉱脈を生み出す原動力となりました。そのアマゾンも色々と手を出しては失敗を繰り返して、すぐに撤退するなど試行錯誤を繰り返しています。iPhoneの二番煎じを狙ったアマゾンフォンなどの事業もありましたからね。

米国IT企業をみていて改めて素晴らしいなと感じるのは、今回のアップルのEV開発計画の白紙撤回のように巨額の資金を投下した巨大プロジェクトでも、無駄だと判断すれば、きちんと引き返す(中止する)という判断を下せるという点です。

こういった事が出来る事が、米国大手IT企業が今日の世界市場を牛耳る事が出来る原動力となっているのだと思います。

    

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