今のアマゾンは2020年や2021年のコロナ禍に急拡大した需要に対応するために沢山増強した物流施設(フルフィルメントセンター)などが、通常の経済状況に戻った事によって急拡大した需要が元に戻り、増強した物流施設がダブついている状態になっています。
そのため、当初予定されていた物流施設の新規増設などを停止したり先送りしたりしながらコストの抑制に取り組んできます。また、経済状況が景気後退へと進みつつあることから人件費の抑制のために人員削減などを行ってコストダウンに熱心に取り組んでいます。
最近のアマゾンの業績はイマイチだよね
特に物流施設を増やし過ぎて苦労しているね
今回は、増やし過ぎたと言われているアマゾンの物流施設(フルフィルメントセンター)やデータセンターを2022年はどのぐらい増設するペースを落としたのかを確認してみたいと思います。
2022年の「オフィス物件」と「実店舗」と「物流施設」の敷地面積
アマゾンは、毎年通期決算(1年間トータルの決算内容)を発表する際に敷地面積の状況を記載しています。
「オフィス物件」と「実店舗」と「物流施設・データセンター」の3つに分類して記載されています。「物流施設・データセンター」の項目に、物流施設とデータセンターが合わさった敷地面積が記載されています。
敷地面積は、リース契約(借りている)ものと自社保有のものと、それぞれ両方が記載されています。また、「北米地域」と「国際地域」に分けて記載されています。
アマゾンの敷地面積
項目 | リース契約面積 | 自社保有面積 | 地域 |
---|---|---|---|
オフィス | 3061万1000㎡ | 679万2000㎡ | 北米 |
オフィス | 2395万6000㎡ | 180万2000㎡ | 国際 |
実店舗 | 2288万1000㎡ | 66万2000㎡ | 北米 |
実店舗 | 29万1000㎡ | --- | 国際 |
物流施設・データセンター | 3億9159万8000㎡ | 2205万8000㎡ | 北米 |
物流施設・データセンター | 1億4814万6000㎡ | 1261万3000㎡ | 国際 |
「総合計面積」 | 6億1748万3000㎡ | 4392万7000㎡ | 「合計」 |
アマゾンの2022年の敷地面積はこのようになっています。
物流施設やデータセンターは、アマゾンがリースしている物件や自社保有している物件の中での桁違いに多いですね。これがどれだけ前年などから増えているのかは、過去の敷地面積を見ながら確認してみましょう。
物流施設等の過去の敷地面積との比較
2018年~2022年までの「物流施設・データセンター」の敷地面積を確認してみましょう。
「物流施設・データセンター」の項目では、物流施設とデータセンターの合計の敷地面積が記載されているので、物流施設単体での敷地面積は分からないのですが、おおよそどのくらい増やしたのかの目安は分かるのではないかと思います。
アマゾンの物流施設・データセンターの敷地面積
年度 | リース契約面積 | 自社保有面積 | 合計面積 | 増加率 |
---|---|---|---|---|
2018年度 | 2億2651万3000㎡ | 655万2000㎡ | 2億2306万5000㎡ | 11.6% |
2019年度 | 2億6401万6000㎡ | 816万1000㎡ | 2億7217万7000㎡ | 16.8% |
2020年度 | 3億9034万5000㎡ | 1191万0000㎡ | 4億0225万5000㎡ | 47.8% |
2021年度 | 4億9942万7000㎡ | 2626万4000㎡ | 5億2569万1000㎡ | 30.7% |
2022年度 | 5億3974万4000㎡ | 3467万1000㎡ | 5億7441万5000㎡ | 9.2% |
こうやってみると一目瞭然ですね。
コロナ禍では一気に増やしているね
その代わり2022年度は急ブレーキをかけているね
物流施設とデータセンターの敷地面積の増加率は、2018年度と2019年度は10%台だったのが、コロナ禍の2020年度と2021年度は47%増加と30%増加とコロナ禍で需要増加に対応できるように大幅に増やしていますね。
増やし過ぎて維持費が負担になっている2022年度は9.2%と一桁台の増加に留まっているので、やはり大幅にブレーキを掛けている状態ですね。
セグメントごとの敷地面積
セグメントごとの敷地面積も公表しているので、そちらも確認してみましょう。
「北米地域」と「国際地域」と「AWS」の3つのセグメントごとに分かれています。
ここではオフィスの敷地面積は含まれていませんので、アマゾン全体の敷地面積とここでの合計敷地面積の相違は、オフィスの敷地面積の差になっています。
セグメント別の敷地面積
セグメント | リース契約面積 | 自社保有面積 | リース契約+自社保有 |
---|---|---|---|
北米地域 | 4億0398万4000㎡ | 1359万5000㎡ | 4億1757万9000㎡ |
国際地域 | 1億4089万8000㎡ | 629万2000㎡ | 1億4719万0000㎡ |
AWS | 1803万4000㎡ | 1544万6000㎡ | 3348万0000㎡ |
「合計面積」 | 5億6291万6000㎡ | 3533万3000㎡ | 5億9824万9000㎡ |
こうやってみると、AWSは自社保有の敷地面積の割合が高い事が分かりますね。物流施設だったり実店舗だったりの場合は、リース契約の方が圧倒的に多いのに、AWSはリース契約の方が多いとはいえ、ほとんど差がないぐらいの敷地面積の差ですね。大切なデータを管理する施設なので安全性を考慮して自社所有の割合を多くしているのかな。
AWSの過去の敷地面積との比較
2018年~2022年までのAWSの敷地面積の状況をみてみましょう。
今やアマゾンに無くてはならない存在のAWS。アマゾンの利益のほとんどをAWSが稼いできており、更に北米地域や国際地域の赤字をすべてAWSが引き受けている状態なので、AWSは本当に大事な存在です。そのAWSがどのくらいペースで敷地面積を拡大しているのかを確認してみましょう。
アマゾンのAWSの敷地面積
年度 | リース契約面積 | 自社保有面積 | リース契約+自社保有 | 増加率 |
---|---|---|---|---|
2018年度 | 974万0000㎡ | 440万4000㎡ | 1414万4000㎡ | 38.3% |
2019年度 | 1055万3000㎡ | 588万2000㎡ | 1643万5000㎡ | 16.1% |
2020年度 | 1059万9000㎡ | 746万5000㎡ | 1806万4000㎡ | 9.9% |
2021年度 | 1415万2000㎡ | 1196万0000㎡ | 2611万2000㎡ | 44.5% |
2022年度 | 1803万4000㎡ | 1544万6000㎡ | 3348万0000㎡ | 28.2% |
AWSの敷地面積の増加速度とAWSの売上の伸び率が同じように移行しているのかなと思っていたのですが、確認してみたらあまり関連性はなく敷地面積の増加速度とAWSの売上の伸び率はバラバラでしたね。
AWSの敷地面積の増加速度とAWSの売上の伸び率
項目 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|---|---|
敷地面積増加率 | 38.3% | 16.1% | 9.9% | 44.5% | 28.2% |
AWS売上伸び率 | 46.9% | 36.5% | 29.5% | 37.0% | 27.8% |
まあ、強いて関連性を探してみると、敷地面積の伸び率が前年より低下しているとAWSの売上の伸び率も前年よりも低下しているといった感じかな。
まとめ
アマゾンは、コロナ禍の時に急速に拡大した需要に応じるために物流施設(フルフィルメントセンター)を一気に増やしていきました。
コロナ禍が落ちついてECサイトの需要が通常に落ち着き始めると、異常に増加した需要に対応するために拡大した物流施設のキャパシティが余ってしまうようになりました。この余剰分は、不要な人件費やリース費用を発生させる原因となり、利益を圧迫する要因となっています。
ここを解消するために、従来は拡大を続けさせていた物流施設の建設・増築をスローダウンさせる事にしていました。
なので、物流施設の拡大はスローダウンしていますが、アマゾンの利益の心臓部分であるといえるAWSについては、敷地面積の拡大を続けており、それほどスローダウンはしていませんでした。
AWSは、今後も成長を続けてもらう必要がある部門であり、景気後退の今の時期は少し成長性が落ちるかもしれませんが、AWSのデータセンターの拡張を続けていく事で今後の売上増加へと繋がっていく事にもなるので、物流施設のように急ブレーキを踏んでいるわけではないというのが分かった事は良かったと思います。
定期的にこうったデータも確認していこうと思います。
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