日本株市場、米国株市場共に大幅な下落が続いており、今年は絶好調だった株式市場にも急速に暗雲が立ち込めてきました。ドル円相場も激しく巻き戻しの動きが進み、1ドル160円台だったドル円相場もあっという間に142円台に突入するなど激しい展開となっています。
急に嵐のような感じになってきたよね
上がるスピードよりも下がるスピードの方が速いですからね
米国では経済指標がイマイチな状態が続いており、景気後退(リセッション)に入ったのではないかという想定が強くなってきました。また、米国が利下げをする可能性が濃厚となった事で、ドル円相場も円安ドル高から円高ドル安へと急激に転換しています。
米国株に投資するにあたって、株安・円高という最悪の展開になってきました。
米国では、インフレを退治するために政策金利を高くすることを続けてきました。それでも景気が悪化せずにいたから良かったものの、最近ではインフレは落ち着いてきたけど景気が落ちてきているような感じなので、リスク回避の動きが強まっています。
ISM非製造業景気指数は、市場予想を下回る水準となっており、景気の判断基準となる50を下回っている(50以上で景気良い、50以下で景気が悪い)状態が続いている事から警戒感が高まっており、数値自体も今年最低の数値となっています。
「ISM非製造業景気指数」
また、雇用統計の1つである非農業部門雇用者数も市場予想の17万6000人を大幅に下回った11万4000人となっていました。近年3年間でも最低水準の雇用者数であり、想定以上の低さに市場では驚きが広がっているようです。
また過去2か月間の非農業部門雇用者数も下方修正されており、雇用状況が思っているよりも悪いという印象を強く与えています。
「非農業部門雇用者数」
そして、FRBにとっても重要な指標となる失業率も大幅に悪化していました。FRBにとっての2大責務である物価安定(安定したインフレ率)と最大雇用(雇用の安定)においては、今まではインフレ退治に重点を置いていましたが、インフレが落ちついてきたと思ったら、今度は雇用が脅かされる状態となっています。
先日発表された失業率は市場予想の4.1%を上回る4.3%となっていて、コロナ前の2019年や2018年の水準を超えてしまっています。コロナ後の異常な状態を立て直そうとしてインフレを抑えるために高金利を行っていましたが、雇用状態が今度はやられてきているといった展開になっています。
年度別の失業率の変動幅
年度 | 失業率 |
---|---|
2018年度 | 3.7%~4.1% |
2019年度 | 3.5%~4.0% |
2024年度(1月~7月まで) | 3.7%~4.3% |
去年(2023年度)は失業率が3%台と安定しており、一時は53年ぶりに失業率が3.4%という低水準となっていたこともあり、株式市場も景気の力強さを好感していたのですが、今年の失業率は1月から徐々に悪化してきており、ついに4.3%という水準にまで上昇してしまいました。
急激な景気悪化を警戒して、市場では大幅な利下げを想定する動きが強まっており、従来であれば9月に0.25%の利下げを想定していたのが、今では0.50%の利下げを強く意識する状態となっています。そして、その次の11月のFOMCでも0.50%の利下げ確率の方が高くなってきています。市場では連続大幅利下げを織り込み始めています。
「市場の利下げ確率想定(現在の政策金利は5.50%)」
0.25%という段階的な利下げであれば、株式市場は利下げを好感していく可能性が高いのですが、0.50%という大きい幅で利下げを連続して行わないといけないという事になれば、それだけ急速に利下げをしないといけないほど景気が悪化しているという悪い方向に取られることから株式市場の先行きが厳しくなっていきます。
利下げなどの処方箋は、実施したからといって急に効果が表れるものでもなく、ジリジリと効果が表れてくるものなので、利下げをしたからといって景気が急回復する物でもないです。
なので、景気が落ち込み始めていれば少しずつ利下げをしながら景気を安定させることが出来ればベストなのですが、大幅な利下げを行うという事は、強い薬を処方しないといけないぐらい患部が悪化しているという事でもあるので、利下げという処方による好感度よりは、そこまでしないと景気を支えられないという景気の悪さの方に焦点が当たるため、株式市場にとってバッドニュースとなってしまいます。
今回の雇用統計などの経済指標の悪化は、今後の経済状況を想定する上で、非常に良くない状況であり、米国株式の先行きに不安が高まっていますね。米国株市場は年初から大きく上昇していたので、その反動も大きくなりそうで、9月下旬ごろまでは下落基調になっていく可能性が高そうな感じだなと思っています。
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