投資をしていると、株価が下り始めると「下落相場の始まりだ」とか「暴落が始めった」などの意見が多く出るようになってきます。
逆に、下落相場から急反転して上昇を始めると今度は「上昇相場の始まりだ」「株価の底入れが始まった」などの意見が多くみられるようになっていきます。
下落相場の時に、「ここから上昇する」とか「下落はストップする」という意見はあまりみられなくなるし、上昇相場の時は、「ここで上昇が終わる」とか「転換期になった」などの意見はあまり目につかなくなります。
下落相場には下落に合わせた意見、上昇相場には上昇に合わせた意見が多くなってくるのはなぜなのだろうか?
同調圧力と投資
投資は、自分のお金を使って自分で投資をするものです。なので、その行為には非常に心理的な要因が大きく左右されます。
最近は、機械で自動的に投資をする自動売買などもありますが、普通の投資家達などは自分で投資をするのが基本となります。ゆえに、そこには個人個人の気持ちや思いが入り込むようになっています。
投資は、機械的に判断しているというよりも人の心理に大きく左右されながら動いていきます。
だから時には必要以上に大きく下がる時もあれば、必要以上に大きく上がる時もあります。人の心理が通常の判断以上に過剰に状況を判断してしまって、普段以上の行き過ぎた状況を創り出してしまう事があります。
パニック売りやパニック買いなどは、その最たる例となります。売りが売りを呼び、買いが買いを呼び、皆の想定以上にドンドンと相場が進んで行ってしまうのです。
皆、我先にとなるよね
同じように感じるんだよね
人は寂しい動物です。だれかと共に居ないと心もとないし、誰かに承認されたいという気持ちも多くの人がもっています。そして、それはお互いの価値観を共有しようという同調圧力をうみやすくなります。
投資は、もともとこういった皆の意見に同調しやすく、相場が急に動くことが多かったのですが、近年になるとその動きはますます加速する様になっています。
それは、インターネットの発展と共に、新しい投資の情報収集の在り方が関わってきているのです。
フィルターバブル現象と投資
インターネットが普及した事により、情報収集が一気に捗るようになりました。皆さんも、ネットが無ければ保有銘柄の情報収集など出来ないと思います。
誰でも気軽に投資情報にアクセスすることが出来、誰でも気軽に決算情報にアクセスすることができ、投資に関する情報収集は手軽に出来るようになりました。
スマホの普及により、いつでもどこでも情報を探す事ができ、手軽なネット環境の普及により、個人の意見も数多く見聞きできるようになっています。
誰もが、ネットに依存している状況において、ネットでの弊害も同時に発生する様になっています。
SNSが発展することによって、情報の収集をSNSで行う人も多くなっています。SNSやネットでの情報収集は便利な反面、予期せぬ情報の偏りが起こる事があります。そして、それに気づかずに見えている情報が当たり前で正しいものだと信じ込むことによって正常な判断を妨げる事もあるのです。
SNSや検索エンジンは、私達の好みや検索履歴を元に最適な情報を提供してくれています。一見、それは良い事のように思えるのですが、一方でそれはAIによる情報の取捨選択を任せている状態となります。
AIによって私達が最適だと思うものを優先的に表示することによって、情報が一方的になってしまう事があります。
これをフィルターバブル現象といいます。
私達が見ているインターネットの世界は、皆が同じ情報を平等に見ているように感じるけれども、実は人によって見えている物は微妙に違うようになっています。
検索情報やアクセス情報などの日々の個人の情報の蓄積によって、その人が見たいと感じるような情報をAI側が推測して情報を集めていきます。そして、その人があまり興味がない情報はその人にとっては価値の無い情報として判断されて表示頻度を落としていきます。このようなフィルタリングを行う事で、その人の満足度が高まっていく事に繋がっていくのです。
そして、そのフィルタリングを元に各個人ごとにデータを細分化していき、より個人の好みに合わせた仕様へと適用していきます。このような仕組みをパーソナライズといいます。
フィルタリングを行い、パーソナライズを実施することで、フィルターの泡に包まれた状態になる事で情報の集約化が行われ、自分の意図した情報・自分の好みの情報が集まりやすくなるのです。
本来であれば、これは私達にとっては便利な事であり、私達が心地よくネット環境を使っていくための有難い環境を作ってくれている事になります。
莫大な情報量があるインターネットの世界において、日々の私達の好みや検索履歴を元に、最適な情報を選択してくれることは、私達の時間の有効活用に繋がっていき、私達のQOL(生活の質)を向上することに非常に役立っています。
ただ、投資をする上においては、こういった事によって自分が好む情報が上がりやすくなっているという事を意識しておいた方がいいと思います。
保有株の株価が急落したり、株式市場が暴落したりしたら、誰もがパソコンやスマホで検索を繰り返していると思います。
- 「株価 急落」
- 「米国株 暴落」
- 「アマゾン 暴落」
株式市場が急落したり、保有株が暴落した時は、そういった情報しか検索しないです。そして、その検索結果を元に同じような情報ばかりがリストアップされるようになっていきます。
株価が急落した時に、「株価上昇」とかを検索して入れる人は少ないでしょう。株価が下落した時には「暴落」とか「下落」とかを普段から検索するので、下落時に検索する表示結果は自ずと悲観的な意見のオンパレードになってしまいます。
株価が下落している時に、悲観的な情報ばかりをみていると私達の気持ちも不安になります。特に急落や暴落をしている時などは、悲観的な情報の洪水が起こります。
売りが売りを呼ぶのは、こういった情報を過度に扱う事で、悲観的になり過ぎてパニック売りを誘発してしまう事があるからです。
投資の情報を集める事は大切な事なのですが、その情報に振り回される事が無いようにしないといけません。
エコーチェンバー現象と投資
現代社会においてSNSを利用してない人は少ないと思います。誰もが何かしらのSNSを利用して情報交換や情報収集をしています。
特にSNSは、おなじカテゴリー(同じ趣味・好み)の人々を結び付ける事に役立ち、自分達の楽しいコミュティーを簡単に作る事ができ、新しい仲間と気軽に繋がる事で人生の楽しさを高める事に非常に役立ちます。
ゆえに、インターネットの普及と共にSNSは発展してきたのですが、一方でSNSにも弊害があります。
それがエコーチェンバー現象です。
SNSでは、おなじカテゴリー・同じ趣味・趣向・考え方が集まったサークル(グループ)を形成します。そのため、おなじ意見や同じ考え方に賛同する事が多く、違う意見は異端として弾き出されてしまいます。
同じ意見や同じ発言ばかりに賛同が集まり、そのような発言ばかりに触れる事で、その意見が唯一正しいものだと思い込んでしまう事もあります。
同じ考え方を持つグループに属することで、そのグループ内での発言はグループの趣旨に沿った意見に同調することが多くなり、「いいね」と承認されたり、同じ仲間と過ごす事で、その空間の居心地の良さに浸ってしまって、その場が閉じた社会であるという事を忘れてしまい、自分の意見や考え方を過度に過信してしまう事に繋がっていきます。
株式投資の世界においても、様々なグループ分けがされています。
- 成長株
- 高配当株
- レバレッジ投資
- インデックス投資
- ディフェンシブ投資
資産を大きく増やそうと思うと「成長株」に投資をする事になると思います。そうなると多少のリスクを取る必要がうまれてきます。それが行き過ぎると、リスクをとる事が正しく、資産を増やす為に成長株投資をする事が正しい事だという認識になってしまう事があります。
そういったグループに属していると、安定的な投資になる「高配当株」は間違ったものだという認識になってしまう事があり、高配当に投資している人を馬鹿にしたり、攻撃したりする人も出てきます。
レバレッジ投資のグループに属する場合にも似たようなケースに遭遇することがあります。
リスクをとる事が正しいという意見が強くなり過ぎてしまったり、早く大きく資産を増やす事が正義だという風に思い込んでしまったりと、同じ意見の方々だけで集まってしまうと過度に極端な意見に進みがちになってしまいます。
一方で、安定的な投資を志すインデックス投資やディフェンシブ投資にも同じような排他的な状況が生まれる事があります。
「リスクをとる事が間違っており、インデックス投資のパフォーマンスに勝てない個別株投資をしている人はバカだ」というような風潮に進むことがあります。
投資方法の違いで喧嘩してる時もあるよね
色々な意見を認めないとね
自分達と同じ意見・価値観の人々が集まる事で、他の方法は異端児となり、同じ意見ばかりが集まり、自分の意見にも同調する意見が多く集まる事で、必要以上に自分たちの意見を過信してしまう事に繋がっていきます。
大きなくくりでいえば、「株クラ」にも同じ事が言えます。
- 投資をしない人は情報弱者だ
- 貯金だけしかしてないなんて愚かだ
- 保険に加入するなんて金をドブに捨てるものだ
投資をする事に優越感を持ち、投資をする事が正しく、資産を増やす事が正義だと思い込んでしまうと、他の価値観や違う人生の生き方すら否定することになってしまいます。
ネット社会は素晴らしく便利で役立つ反面、情報の取扱いには気を付けないといけないものですよね。
情報の取扱いと投資
現代社会において、インターネットは無くてはならない存在です。我々は、インターネットから多くの恩恵に預り、人生の楽しみを増やしたり、生活のレベルの向上を図る事が出来ています。
今後もますますITやAIが発達していく事で、我々の利便性は高まり、私達の人生の時間を有効活用することができるようになります。
一方で、私達に最適な環境をネット側で提供してくれている事で利便性が追及されているがゆえに、情報がフィルタリングされており、快適な情報をより多く目にする事になっているという事は忘れずにいなければなりません。
投資においても、自分に都合のよい情報ばかりを集めたいと思う心理が働いてしまうし、自分の価値観や投資スタイルにあったコミュニティーに属することでイエスマンばかりの社会に染まってしまう事もあります。
様々な意見に触れる事で、様々な価値観があり、人によって様々な正解選択肢があるという事を忘れずにいなければなりません。
投資において、皆が同じ意見になるという事はある意味危険な事でもあるのです。
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